2012年3月22日木曜日

肺腺がん特効薬へ急所遺伝子を特定

肺腺がん細胞の急所発見

日本人の死亡率第一位のがんの中でも、最も患者の多い肺がん。その肺がんの中で最も多い肺腺がんのがん細胞の生死を決定する遺伝子が発見された。発見したのは名古屋大大学院医学系研究科の高橋隆教授と山口知也助教らのグループ。

2007年には、高橋教授らは肺腺がんに特に多いTTF1という遺伝子を発見していた。しかし、TTF1はがん細胞だけでなく正常な肺の機能にも必要であり、当時は肺腺がんが引き起こされる仕組みまでは解明されていなかったのだ。

その後に人間の肺腺がんの細胞株を使った実験で、TTF1が出現させるROR1というタンパク質が、肺腺がんを生存させるか、細胞死させるかを決めていることを突き止めた。マウスに肺腺がんの細胞株を移植し、ROR1を抑制すると肺腺がんが細胞死し、がん細胞は増えなくなったのだ。

現在の肺腺がんの治療薬としては、「イレッサ」がよく使われるが、別の遺伝子を標的にしているため服用から1年程度で耐性ができてしまい、抗がん剤が効かなくなる例が報告されている。しかし、イレッサへの耐性ができた場合でも、ROR1を抑制することで、がん細胞の増殖が抑えられることも確認された。

国内の肺がん患者のうち、非喫煙者の女性はほぼ肺腺がんとされる、最も症例数が多い肺がん。狙うべき遺伝子がROR1と特定されたことで、抗がん効果の高い特効薬の開発が期待されるようになった。

研究論文は、米がん専門誌キャンサーセル(電子版)に発表された。