2012年9月18日火曜日

乳がん,肝臓がん,胃がん の新薬が治験開始

がんが治り難く、再発しやすいのは、現在の治療では がん幹細胞が叩けていないからだと考えられている。がん細胞を生み出すもとである「がん幹細胞」を標的とした臨床研究が相次いで始まる。

慶応義塾大学などは胃、大阪大学は肝臓が対象で、いずれもがん幹細胞の表面にある物質の働きを抑える抗がん新薬の臨床試験だ。

慶大と国立がん研究センター東病院は、年内にも胃がん患者を対象にした臨床研究を始める。患者の体内に潜むがん幹細胞の表面にあり、抗がん剤などに対する防御能力を高める働きを持つたんぱく質「CD44V」に着目した。

マウスの実験では炎症を抑える薬「スルファサラジン」と抗がん剤を一緒に投与。たんぱく質の働きを抑え、がん幹細胞が死滅しやすくなった。増殖だけでなく、転移や再発も抑えられた。臨床研究ではまずスルファサラジンを投与し、効果や安全性などを調べる。

阪大では肝臓がんのがん幹細胞を対象にした臨床研究を来年に始める予定。 がん幹細胞表面の「CD13」という酵素の働きを抑える白血病治療薬「ウベニメクス」を、抗がん剤「5―FU」とともに投与する計画だ。マウスの実験では、がんは縮小して確認できなくなった。従来、5―FUを単独で投与し続けると効き目が徐々に薄れてしまうなどの課題があった。

一方、骨のがんや乳がん でも 「がん幹細胞」を狙った新薬開発へ基礎研究成果が続出している。国立がん研究センターでは骨肉腫のがん幹細胞の内部で働き、病状の悪化を招く微小RNA(リボ核酸)を3種類特定した。このうちの1種類のRNAの働きを抑えた実験では、抗がん剤が効きにくいがん幹細胞に対しても薬の効果が表れた。がん幹細胞の数が大幅に減るのを確認できたのだ。研究チームは動物実験を続け、3年後をめどに臨床試験(治験)を始める計画だ。

東京大学では乳がん幹細胞が増殖するために作る3種類のたんぱく質を見つけた。これらのたんぱく質はがん幹細胞の近くまで新生血管が伸びるよう促す役割を持っていた。この新生血管の働きを妨げることができれば、がん幹細胞を兵糧攻めにできるとみている。

これらの新手法に基づく新薬の抗がん効果が確認できれば、がん治療に大きな進展が期待できる。