2012年3月30日金曜日

前立腺がん手術の後遺症を予防

前立腺がんの手術は、最新のロボット手術で行うと従来の開腹手術よりも患者の負担が大きく軽減される。

前立腺がんを従来の開腹手術で手術すると出血が平均500~600ccだが、ロボット手術では約100ccの出血で済む。ロボット手術は小さな穴を開けるだけで体を大きく切らないために、手術後の回復が早く、手術2日後には歩行開始、7日後には退院が可能なのだ。

ロボット支援前立腺全摘除術は、先進医療として4月1日から日本でも保険適用となった。これまでは全額自己負担の高額医療とされて自己負担が約140万円と非常に高額だったが、前立腺がんの手術が必要な患者には朗報となった。

ロボット手術とは全自動で機械が手術されるものではなく、執刀医の手術補助システム。患者に開けた小さな穴から4本のロボットアームを挿入して施術する。執刀医は手術台横のコンソールに座り、ロボットアームの先端に装着された内視鏡や超音波メスを操作することで手術される。内視鏡の画像は3Dハイビジョンの高画質で最大15倍までズーム拡大が可能。医師は画像を立体ビューワで見ながらコントローラを操作することで、ロボットアームがその動きを再現するという仕組み。

内視鏡が3Dで高画質さらにズームできるために、執刀医自身の目が手術処置している部位の目前のような感覚で手術できるのだ。ロボットアームは人間の指先の震えも取り除くスムーズな動きで、執刀医の指の5cmの動きに対して、手術器具は1cmの動きで対応することから、精度も高い。

前立腺がんの手術は、神経や血管を温存する緻密さが必須であり、その精度が手術後の排尿・性機能を大きく左右した。従来は、一部の名医にしか不可能だった高精度の手術が、一般の医師にも簡単に可能になったロボット手術は大変ながん治療技術なのだ。

前立腺がんを高精度に執刀できるロボットは、米国製の「ダヴィンチ」。米国では前立腺がんの根治手術の90%はこの手術ロボット「ダヴィンチ」で手術されている。しかし、日本国内の導入台数は2011年にようやく30台を超えた程度。従来の医師の技量に頼ったリスクの高い開腹手術が多く、手術ロボット「ダヴィンチ」が導入された病院でも経験を積んでいる医師はまだ少ない。ロボット手術の100例以上の実績を持つ病院は稀少なのだ。

日本でも今後の前立腺がんの手術は、保険適用を機にロボット手術が標準となるだろう。

2012年3月29日木曜日

前立腺がんの原因、予防と食事

伝統的な日本食を食べるだけで、自然に前立腺がんを予防できる。

遠くない過去まで日本人の前立腺がんの発症率は、欧米人に対してわずか4%程度と非常に少なかった。しかし、食が西洋化した近年は前立腺がんと大腸がんの発症が著しい増加傾向となっている。

中高年の男性に発症しやすい前立腺がんの要因は、加齢に伴って女性ホルモンが減少し、ホルモンバランスが崩れることが原因だと解っている。

このホルモンのバランスを調整できる成分が、日本の伝統食や豆類に多く含まれているイソフラボンという成分。大豆には“イソフラボン”が多く含まれることから、食毎に大豆が原料の味噌汁、大豆製品である豆腐や納豆をおかずに食べるだけで、自然とがん予防食が摂取されていたのだ。

しかし、現代の食生活では、大豆製品を通じてイソフラボンを得る機会が大幅に減ってしまった。毎食摂取する必要はないものの、納豆や豆腐、豆乳などの大豆製品は積極的に摂ることで、前立腺がんの予防には極めて有効だと再認識したい。その他に前立腺がんの予防には、抗酸化作用が高い成分=リコピンが豊富なトマトなどの野菜も有効。

伝統的な日本食は、前立腺がん、乳がんを予防する優れた機能的な食品だったのだ。

2012年3月28日水曜日

肝臓転移した大腸がんに新治療法

難治性肝臓がんの生存率改善 微小球放射線塞栓療法

難治性肝臓がんの生存率を改善 微小球放射線塞栓療法

大腸がん(結腸がん・直腸がん)の約50%でがん転移が発生し、その多くは肝臓への転移でがんが広がってしまう。大腸がん患者の約90%は、最終的には肝臓へ転移したがんによる肝不全のために死亡するのだ。結腸がん・直腸がんは、2008年に米国で15万3000人、欧州では33万3000人が発症している。大腸がんは食生活に関連が大きいがんで、アジアでは韓国での発症例が多い。食の西洋化が進展した日本でも、非常に患者数が激増している がん なのだ。

この結腸がん・直腸がん から転移した難治性 肝臓がんに新しい治療方法の研究が進んでいる。

新しい肝臓がん治療方法は、「放射線塞栓療法」。「放射線塞栓療法」は選択的体内照射療法(SIRT)とも呼ばれ、放射性物質(イットリウム)の微小球(SIR-スフェアズのマイクロスフェア)を使って治療する新たな大腸がん治療手法だ。微小球は放射線医が体内に設置し、健康な肝臓組織には影響を与えずに選択的に放射線をがん患部へ照射する。

この新治療法を研究・推進しているのは、オーストラリアはシドニーのセント・ビンセント病院。研究結果は腫瘍外科学会の第65回年次がんシンポジウムで発表されたが、治療の難しい肝臓がん患者に対して、放射線塞栓療法によって生存率が2~3倍に改善したと報告された。

実験で新しいがん治療法の研究対象となったのは、化学療法が難しいとされた肝臓がん患者が中心の463人。
結果は、結腸がん・直腸がんから肝臓がんにがん転移した251人のがん患者のうち、放射線塞栓療法を受けた220人の患者の平均生存期間は11.6ヶ月。これに対し標準的または最高の支持療法を受けた31人の患者では6.6ヶ月。新治療法の効果で生存期間は約2倍。

その他の適用例は、胆嚢がん41例、神経内分泌がん40例、肝細胞がん27例、すい臓がん13例、乳がん11例、胃がん9例、その他のがん71例で、いずれも、がんが肝臓へ転移したがん患者212人。このうちSIR-スフェアズ微小球による治療を受けた180人の患者の平均生存期間は9.5カ月だったが、標準的または最高の支持療法を受けた32人の患者では2.6カ月だった。新治療法の効果で生存期間は約3倍。

研究報告では、放射線塞栓療法は、転移した肝臓がんに対して、従来のがん治療法よりも2倍~3倍の生存期間の向上と、大幅な病状改善に効果があると結論された。

今後は、放射線塞栓療法の評価についてさらに大規模の治験を実施しつつ、さらに肝細胞がんについても試験が行われる予定だ。

2012年3月27日火曜日

自動追尾する高精度肺がん治療

日帰りでがんを治療できる超高精度スナイパーマシンとは!?

新世代の放射線がん治療機器「サイバーナイフ」を用いた 切らない日帰りがん治療の普及が始まった。
「サイバーナイフ」は放射線治療機器の一種だが、モニターシステムを統合した大掛かりな がん治療システムだ。
「サイバーナイフ」の放射線発射装置である「リニアック」は、放射線を先端からがん細胞に最小5mmの放射線ビームを放つ心臓部だ。このビーム口径は世界最小クラスの細さでこれがまず治療精度を高めている。

そして、横たわるがん患者の周囲を「リニアック」が 1200通りの角度と方向からがん細胞に向かって細い放射線ビームを照射する。がん細胞だけを様々な方位から細く狙い打つことで、正常細胞のダメージを最小化しつつ、がん細胞だけに繰り返し、細く放射線を照射する治療機器なのだ。

もう一つのサイバーナイフの特色が呼吸によるがん部位の自動追尾だ。呼吸することで肺だけなくがん患部も微妙に動いてしまうが、このがん患部の動きに同期して、放射線も細かく動きながらビーム照射されるのだ。
がん患部を追尾する情報は、天井に取り付けられた3台のカメラからの情報から分析される。 2台はX線カメラで、残る1台が赤外線カメラ。

患者は、体の動きが最小化されるように固定用マット敷いたベッドに横たわり、 LEDライトをお腹に装着する。
システムは、体内のがんを直接に見ているのではなく、がん細胞の至近に「金マーカー」と呼ばれる目印が入れられている。金マーカーは、太さ1.1mm、長さ5mmの微小。この「金マーカー」が呼吸に合わせてがんと同じ動きをするのをX線カメラで追尾する。

金マーカーのトレースはX線カメラで行われるが、 X線を患部周囲へ投影し続けるのは放射線被爆となるので良くない。そこで体に害の無い赤外線カメラでLEDライトと金マーカーの距離と呼吸による動きの相関を記憶しておき、呼吸によって動きがん患部の位置を補足し、トレースし続けるのだ。サイバーナイフによるがん治療は1回30分間程度で、入院の必要も無い。 2週間で計4回程度の治療となる。

1.5cmの肺がんが、1ヵ月後にはがんが消えさった例もある

サイバーナイフで治療が可能ながんは、今のところ肺がん、脊椎がん、脳腫瘍などである。
残念ながら放射線に弱い粘膜を持つ消化器系のがんには使えないために、胃がん、大腸がん には使えない。
しかし、海外では乳がん治療にサイバーナイフを利用して効果が上がっているとの報告もある。今後は、乳がん に続き、肝臓がんやすい臓がんの治療への応用に強い期待が寄せられている。

切らずに、日帰り治療でがんを治す時代なのです。

大学病院のがん治療用レシピ

がん患者向けに栄養士がレシピ本

大学病院の栄養士さんが、がん患者の専用のレシピ本を出版したことが話題になっている。がん患者は、治療のための抗がん剤や放射線治療の副作用で食欲が落ちてしまい、さらには口内炎が多く、治療状況に応じたきめ細かな栄養管理が不可欠だ。

島根大付属病院の川口美喜子医師(副部長)が、栄養士の青山広美さん を“がん専任栄養士”に任命し、がん患者のためのメニュー作りを依頼したのがはじまり。青山さんは病室を回り、がん患者1人ひとりの病状を知るとともに、病院食への不満や希望などを聞き、 「がん患者に食べる喜びを」と、レシピに工夫を凝らしたのだ。 小児がん治療のために口内炎や吐き気で食欲がない女の子からは「お子さまランチが食べたい」とのお願い、結腸がんから肝臓転移術後の60代男性からは「普通の家庭の食事がほしい」との要望。その他にも「何も食べたくない」「魚のにおいが気になる」などの意見も多く出たそうだ。

そして、工夫を重ねて、

  • 嚥下障害(飲み込みに問題)がある場合には、卵に浸したむせないパンがゆ
  • 口内炎には口がすっきりするモモとミカンのシャーベット
  • 口に入れやすいスティックおにぎり
  • 酒好きだった患者には居酒屋風くし焼き-
などを考案し、好評を博した。今では提供したがん患者用の個別食は300メニューを超えた。
この300メニューの中から、厳選した73メニューをレシピ集として纏めた出版するに至った。川口副部長は「患者さんの食事対応で一番大切なことは、わずかな量でも口から食事をとることと、満足感です」と話している。

「73の食事レシピ」(127ページ)は、医学書院(東京都)から1冊1890円で発売中。

2012年3月26日月曜日

がん新薬の実用化へ28億円の助成

28億円の予算助成で がん新薬の実用化を後押し

前立腺がんに対する新薬の治験が、6月に開始される。
治験を実施するのは、九州は久留米大の先端癌治療研究センター。
患者の免疫力を活用してがん細胞だけを攻撃する「がんペプチドワクチン」の新薬だ。

この治験には厚生労働省からの助成が支給される。
厚生労働省は2012年度から、大学などが始める新薬承認に向けた治験の助成に乗り出しているのだ。
研究段階にとどまっている難治性がんや希少がん治療薬の実用化を後押しするための助成制度で、
久留米大(福岡県久留米市)のがんワクチンの治験への助成が第一弾となる。

この助成制度は、患者の少ないがん治療薬の研究開発費を助成することで、
新薬を早期に治験段階に引き上げるための、新たな取り組み。

この助成制度の対象は、難治性の膵臓がんや肺がん、肉腫、小児がん。
厚生労働省では九州に患者が多い難治性血液がん、成人T細胞白血病(ATL)も対象として含める方針で、
2012年度予算案に関連予算28億6千万円を盛り込み、全国で8グループが助成対象となった。

難治性がんや希少がんは、患者の数が少ないために、
新薬を開発しても研究投資に見合う収益が上がりにくいされ、民間の製薬会社では敬遠されてきた。
一方、大学などの研究期間では、開発に取り組んでも費用不足から臨床データを収集する治験段階へ進めず、
足踏みしている新薬研究が多いのだ。

今回の助成制度では、対象を企業だけでなく大学などの研究グループにも拡大した。
新薬承認に必要な3段階の治験のうち、第2段階までの経費を厚生労働省の予算で負担する仕組みだ。
安全性や有効性を確認された第2段階の治験まで終えれば、民間企業の開発は促される。

治験最終段階の第3段階に際しては、大学から製薬会社へ引き継がれ、新薬が実用化される。

厚生労働省では がん細胞の特定の分子だけ狙い撃つ「分子標的薬」の新型抗がん剤の実用化研究も対象として期待している。
少しでも多くのがん新薬を研究段階から早期に治験を実施し、有効な新薬を待望するがん患者に届けられる助成制度だ。

2012年3月23日金曜日

すい臓がん死亡率を激減

膵臓がんを予防できる安く安全で手軽な方法が発見された。

鎮痛剤アスピリンを毎日服用することで、がんの発病が予防できるのだ。この興味深い研究は、医学誌ランセットに21日発表された。

鎮痛剤アスピリンを毎日少量服薬した人は、3年後にがんを発病する確率が服用しなかった人よりも24%も低下する。さらに、量に関わらず毎日アスピリンを飲んだ人は5年後にがんで死亡する確率が37%低下。このがんリスク低下現象は男女によらず、効果が見られた。また、アスピリンの副作用とされる内出血のリスクも3,4年で低下するとされた。

アスピリンは、約2400年前の古代ギリシア医学者のヒポクラテスの時代に起源を持つ鎮痛剤。柳の樹皮に含まれるサリシンという成分が原材料になっている。今では、薬局で1粒約2円50銭程度の安価で購入が可能だ。

既に2007年には、アスピリンが長期的にがんによる死亡の確率を低下させると、研究報告がされていた。しかし、がん予防効果を得るには8年以上の継続摂取が必要とされていたのだ。ところが、今回の研究では、短期間でもアスピリンにはがん予防効果があることが判明したのだ。さらにがん治療にも利用できる可能性が示されている。
アスピリンは安い価格と、高い安全性という2点で、非常に有効ながん予防策にできる。

家族にがん、特にすい臓がん患者を持つ人は、アスピリンを日常的に服用することでがんリスクが低下する可能性が高いので、強く推奨される。

2012年3月22日木曜日

肺腺がん特効薬へ急所遺伝子を特定

肺腺がん細胞の急所発見

日本人の死亡率第一位のがんの中でも、最も患者の多い肺がん。その肺がんの中で最も多い肺腺がんのがん細胞の生死を決定する遺伝子が発見された。発見したのは名古屋大大学院医学系研究科の高橋隆教授と山口知也助教らのグループ。

2007年には、高橋教授らは肺腺がんに特に多いTTF1という遺伝子を発見していた。しかし、TTF1はがん細胞だけでなく正常な肺の機能にも必要であり、当時は肺腺がんが引き起こされる仕組みまでは解明されていなかったのだ。

その後に人間の肺腺がんの細胞株を使った実験で、TTF1が出現させるROR1というタンパク質が、肺腺がんを生存させるか、細胞死させるかを決めていることを突き止めた。マウスに肺腺がんの細胞株を移植し、ROR1を抑制すると肺腺がんが細胞死し、がん細胞は増えなくなったのだ。

現在の肺腺がんの治療薬としては、「イレッサ」がよく使われるが、別の遺伝子を標的にしているため服用から1年程度で耐性ができてしまい、抗がん剤が効かなくなる例が報告されている。しかし、イレッサへの耐性ができた場合でも、ROR1を抑制することで、がん細胞の増殖が抑えられることも確認された。

国内の肺がん患者のうち、非喫煙者の女性はほぼ肺腺がんとされる、最も症例数が多い肺がん。狙うべき遺伝子がROR1と特定されたことで、抗がん効果の高い特効薬の開発が期待されるようになった。

研究論文は、米がん専門誌キャンサーセル(電子版)に発表された。

末期大腸がんの余命を4倍に

分子標的抗がん剤が皮膚障害 「3者併用」で激減

がん細胞だけに作用するとの触れ込みで期待の大きかった分子標的薬に分類される新タイプの抗がん剤だが、がん治療に用いた分子標的薬の副作用の中でも皮膚障害が大きな問題になっている。
使用開始時からの予防的治療の必要性を訴えた。

分子標的薬は、がん細胞特有の分子を攻撃する狙いだが、現在承認されているものは未完成で、皮膚などの正常細胞をも障害する。

例えば、大腸がんで用いられる分子標的薬 セツキシマブとパニツムマブの場合。分子標的薬 セツキシマブとパニツムマブはがん細胞に過剰に出ているEGFR(上皮細胞増殖因子受容体)分子を攻撃して、がん細胞の増殖を抑える。効果があった場合には、手術不能の再発大腸がん、いわゆる末期がんの生存期間を平均6カ月から約2年と4倍にまで延長できる。しかし、かなりの高率で、顔などに酷いニキビ状の皮疹、指の亀裂、爪周囲の炎症などの副作用が発生する。これは、これらの抗がん剤が、皮膚や毛、爪の増殖や分化も抑制することが原因だ。

まず第一に、分子標的薬には「効かない患者がいる」。セツキシマブとパニツムマブに関しては、約4割が効かない患者なので、処方は時間と体力と費用の無駄だ。これは、事前の遺伝子検査で確認できる。 そのうえで適性が確認できた後に投与するのだが、投与初日から抗生物質「ミノマイシン」を飲み、保湿剤およびステロイドの塗り薬を利用することで、皮膚の状態は改善できるのだ。この皮膚障害の予防対策は、知らない開業医が多いので留意する必要がある。抗菌剤の塗り薬なででの対処では、効果が薄いのだ。

がん治療による副作用対策は、皮膚科医でも知見が深いとは限らない。患者でもがんに関する知識を深め、主治医および関連医師と協力することが不可欠だ。

2012年3月21日水曜日

がん新治療法へ低温プラズマ照射

プラズマで悪性細胞死滅 卵巣がん治療で効果確認

正常な細胞を傷つけずにがんの悪性細胞だけを狙って死滅(アポトーシス)させる新しいがん治療法が開発された。開発したのは、名古屋大の吉川史隆教授(産婦人科学)らの研究グループ。

新しいプラズマがん治療法は、特殊な装置で発生させたプラズマを卵巣がんの細胞に照射することで、 がん細胞だけを死滅させる。がん細胞だけが自ら死ぬ「アポトーシス」という現象を引き起こすため、炎症が無いので正常な細胞への炎症=副作用も無いのだ。

通常は大気中でプラズマを発生させると高温になってしまうのだが、大気中でも低温のプラズマを発生させる装置を開発したことで新治療法に成功した。シャーレ上に培養したがん細胞にこのプラズマを照射すると、炎症によって周りの細胞を傷つけずに、がん細胞だけを死滅させることがdけいた。
 
実験では、約10分間のプラズマ照射でがん細胞の7割が死滅することを確認された。さらに正常な細胞にプラズマを照射した場合でも死滅する細胞数は少なく、副作用は殆ど無いとの結論を得た。

実験は、卵巣がんが対象だったが、卵巣がん以外のがんにも効果が期待される。

今後は、プラズマ照射によるがん細胞のアポトーシスが引き起こされる詳しい仕組みの解明されれば、現在の3大がん治療(外科手術、放射線照射、抗がん剤化学療法)に加えて、 第4のがん治療が確立される可能性がある。
 
研究論文は米科学誌アプライド・フィジックス・レターズに掲載された。

2012年3月19日月曜日

肺がんが2週間で全部消失した著効例

2週間でがん細胞がほぼ消滅した肺がん治療薬

日本人のがん死亡原因の第1位は肺がん。毎年7万人近くが肺がんで命を失っている。

1980年代以降に分子生物学が発達したことで、がん細胞の増殖や転移に関係するがんに関連する遺伝子の解明が進んだ。
肺がんには、小細胞がん、腺がん、扁平上皮がん、大細胞がんの4種類があるのだが、
2000年代初頭では、まだ肺がんは、小細胞がんと、それ以外の非小細胞がんの2つに分類することだけで、
肺がん治療法が決定されていたのだ。

その後、がん細胞の働きを抑制する新しいタイプの抗がん剤である分子標的薬が開発された。
肺がんに関する分子標的薬は、2002年にゲフィチニブ(イレッサ)、2007年にエルロチニブ(タルセバ)が保険薬として承認された。
旧来の抗がん剤はがん細胞だけでなく正常細胞も攻撃してしまうために、
治療効果よりも副作用が強く、がん細胞に対する効果が不十分な場合が多かったのが問題だった。
しかし、新開発の分子標的薬はがん細胞で活性化している特定の分子だけをターゲットにするため、 がん細胞だけに特異的に作用し、効果が高く副作用が少ないのが特徴とされた。
しかし、当初の肺がん分子標的薬は、副作用が酷く、医療訴訟にまで発展してしまったのだ。

その後、2004年に、イレッサを初めとする分子標的薬の向き不向きに関して、遺伝子内に指標があることが確定された。

日本では肺がんの70%が腺がん だが、この半数近くにEGFR遺伝子の変異が認められる。
イレッサやタルセバはEGFR(上皮成長因子受容体)という遺伝子の変異に対する薬だが、
EGFR遺伝子突然変異がある肺がん患者に対して、分子標的薬が劇的な効果があることが判明した。 著効例では、イレッサ投与後の2週間でがん細胞がほぼ消滅した例もある。

逆には、EGFR(上皮成長因子受容体)が認められない場合には、
効果が期待薄で、激しい副作用が発現する可能性が高いことから、
治療前の遺伝子検査が推奨されるようになったのだ。

イレッサは日本を含むアジア人、女性、非喫煙者の肺がん、特に腺がんに効果が高い特効薬なのだ。

新発見された抗がん酵素

がんの進行を抑制する万能酵素が世界初で発見された。全ての種類のがんの抑制や転移に効果があるという新発見酵素とは?

 
肺がん、リンパ腫、乳がんや子宮がん、骨髄がんなどの 全ての がん細胞には、共通して「Akt」という酵素が、異常に活性化していることが既に知られていた。
このAkt酵素は、がん細胞の成長を促すだけでなく、がん細胞を他の臓器へ転移させるのにも関わっているのだ。
また、がん細胞に、抗がん剤への耐性を持たせ、がん再発も手助けしてしまうのもこのAkt酵素で、これこそが がん促進酵素なのだ。

Akt酵素の悪しき振る舞いについては1990年代末までに確認されはいたが、肝心のAkt酵素を抑制する物質や方法については、まで見つかっていなかった。
しかし、韓国の建国大学・微生物工学科のアン・ソングァン教授とべ・スンヒ博士が、Akt酵素を分解するタンパク質分解誘導酵素の「ムーラン(Mulan)」を発見した。

つまり、ムーラン(Mulan)をがん細胞へ作用させれば、がん成長を抑制し、がん細胞を殺せる酵素であることが確認されたのだ。
研究チームでは、ムーラン(Mulan)酵素がAkt酵素の284番目のアミノ酸に取り付いてAkt酵素の分解を誘導することで、がん細胞の進行を抑制することが確認したのだ。

Akt酵素は、ほぼ全ての種類のがん(癌)に関わっている。これを抑制できるムーラン(Mulan)酵素をうまく活用できれば、全てのがんを抑制し、再発予防できる全く新しい概念の抗がん新薬の開発が期待されるのだ。

2012年3月16日金曜日

リンパ節へのがん転移を診断する最新がん検査機器

がん転移、正確に診断する次世代PET-CT装置

中部地方の医療機関では初めてとなる最先端のがん診断が可能となる「次世代PET-CT装置」を、富大附属病院が導入した。

この最新のがん検査装置はドイツ・シーメンス社の最新型で、設置費用も含めた総額で約2億6千万円。1日6人程度の検診が可能で、一般の検診費用は90,750円。

画像撮影時間は従来の半分の10~15分に短縮され、従来より小さな5mm程度のがん腫瘍(しゅよう)を発見できる程に性能が向上した。病院は新しい装置を有効活用して、分子レベルのがん治療に役立てたいと話している。

新検査装置では、がんの活性度や悪性度などを診断できるPET(陽電子放射断層撮影)とがんの形や大きさが分かるCT(コンピューター断層撮影)を行える。撮影感度が向上したために画像の精度も高まり、リンパ節に転移したがん腫瘍でもがんの判別が可能となった。

また、患者が入る装置の口径は、閉所恐怖症や肥満気味の利用者にも対応できるよう従来より20センチ大きい77cmとなった。CTは体をスライスの断層撮影した画像を診断する方式で、放射線被曝の低減化も図られた。

2012年3月14日水曜日

抗がん剤の未承認新薬を使える新制度

がんなどの重病 海外承認薬の保険適用へ

厚労省が14年度にも新制度 で混合診療へ
海外で承認されていても、国内の保険承認を受けていないために、がん治療に使えない、もしくは高額の薬剤費を自己負担して困窮しているがん患者が多い。このドラッグラグと呼ばれる新薬の取り扱いに関して、厚生労働省は、がん等の重い病気の患者に関して、国内未承認の新薬を使いやすくする制度を2014年度を目処に創設する。
がんなどが進行し、新薬の保険審査・承認を待てない患者が多いが、がん新薬での投薬治療の機会を提供する狙いだそうだ。治療を受けるがん患者の経済的な負担を和らげるため、保険診療と保険外診療を併用する「混合診療」を新制度に一部適用する方向で検討されている。がんなどの重度の病気で他に治療法の無い患者に対して、未承認薬を提供する。2013年の通常国会に薬事法改正案として提出し、早ければ2014年度から未承認薬と保険診療との混合診療が可能性なる算段だ。
この仕組みは、欧米で導入されている「コンパッショネート・ユース制度(CU制度)」という制度で、厚労省が日本版として詳細を詰めている。対象となる医薬品は、欧米など日本と同じ水準の規制がある国で承認済みで、日本の製薬会社が国内での開発・製造を検討している医薬品を想定している。がんなどの重度の病気にもかかわらず、製薬会社が新薬の安全性を最終確認する「治験」に参加できないような患者が対象となる。
対象の新薬は、製薬会社がまとめて輸入し、患者は「一定の条件を満たした医療機関」で治療を受ける。
これまでは、抗がん剤の新薬は日本で未承認のために治療に使えない薬が多かった。例えば、欧米でがん、腫瘍の治療に使われるザノザールは、日本では今だ臨床研究の段階だ。また、前立腺がんの治療薬のフィルマゴンも日本では、まだ未承認だ。
海外承認済みの新薬でも、最初に日本で治験に参加できるのは年間数万人。これは、米国の10分の1程度の患者数に留まっている。新薬の治験の参加基準に該当せず、重度の病気でも新薬による治療を受けられない患者は、非常に多く苦渋の闘病を余儀なくされてきた。
現在は、未承認薬で治療を行う場合には医師による厚労省に届出が不可欠で、さらに新薬の入手も患者が海外から個人輸入するケースが多かった。新薬の申請から承認までの期間が、日本では1~2年間と長かったためだ。しかし、国内で未承認薬での治療を行うと、治療全般に公的保険が適用されない事態となり、患者は薬代だけでなく検査費や入院費など全額を負担する必要に追い込まれたのだ。病気によっては、薬代や医療費で月100万円近く負担。
新制度では、患者の自己負担は薬代だけとして、それ以外の医療費には公的保険を適用する「混合診療」を認めることを検討している。「混合診療」は、現在は一部の大学病院などで先進的な医療を提供する場合に限り、例外的に認められている。新制度では一部に限られてきた「混合診療」の対象医療機関を広げる仕組みとして期待されている。
日本の新薬承認までの期間は、最近は短縮傾向と言われている。しかし、治験の開始までに時間がかかって承認が遅れる例もあることから、欧米に比べて薬の使用が可能になるまでの期間が長い薬もまだまだ多い。重度の病気では承認を待ち切れない患者が多く、政策対応を求める声が強かった。
混合診療は日本医師会が「貧富の差による医療格差が広がる」などと反対しているが、実際には、混合診療が認めらないために、富める者しか最新医療が受けられないという矛盾が生じている。
一部の先進治療(久留米大学のがん治療ワクチンなど)で緩和ははじまったが、対象はまだ約100例程度。患者団体からは「希望する治療を受けやすくなる」と解禁を求める声が高まっている。

2012年3月13日火曜日

乳がん、前立腺がん予防に効果的な食品

伝統大豆食品でがん予防

「大豆や豆腐などの伝統大豆食品が、乳がん、前立腺がん等のがんリスクを低下させる」と、アメリカ癌学会 (ACS)が発表した。

アメリカ癌学会(ACS)は、医療専門家、政策立案者、一般市民に対し、 がんのリスクを減らす食事や生活習慣等のアドバイスをするために 『栄養と身体活動(健康)に関するガイドライン』を発行しているが、

この2012年版のガイドラインとして、更新・発表された。

 
この更新は、2006年のガイドラインリリース以降に発表された、人間の母集団の研究や室内実験からのエビデンスを再検討した結果だ。

大豆・大豆食品は優れたたんぱく源であり、肉の良い代替品とできる。

また大豆には弱いエストロゲン作用があることから、ホルモン依存性癌を予防するイソフラボン植物性化学物質が豊富なのだ。

さらに、豆腐などの伝統大豆食品の摂取は、 乳がん・前立腺がんだけでなく、子宮内膜がん などその他のがん発病のリスクを軽減することも多くの研究で証明されている。

アメリカがん学会ががん予防に推薦する4つの基本原則は下記のとおり。

  1. 健康的な体重の維持
  2. 運動を心掛けた日常生活
  3. 植物性食品中心の食事
  4. 飲酒は控えめ

2012年3月12日月曜日

「幹細胞」培養する大腸がん新治療法

幹細胞1個から大腸組織再生 大腸がん治療に応用も

がん手術で傷ついた大腸をも再生する技術の開発が東京医科歯科大学で成功した。

開発者は、東京医科歯科大学の渡辺守教授と中村哲也講師ら。

マウス実験では、幹細胞を体外で大量に培養する手法を用いた。マウスの大腸の上皮にある幹細胞1個を培養細胞し、傷ついた大腸に再び戻すと、大腸の傷を覆うようにくっつき正常な組織に育ったのだ。

実験で大量培養されたのは、複数の種類の大腸上皮細胞に育つことができる「体性幹細胞」。マウスの大腸上皮の細胞から「幹細胞」を取り出し、幹細胞を増やす因子をふりかけコラーゲンなどと一緒に浮遊液の中で培養した。そして、薬で腸炎を起こさせたマウスに対して、肛門から粘性のある液体と一緒に培養した「幹細胞」注入したところ、1週間で傷口にくっつき徐々に正常組織を作り出すことが確認された。さらに、6カ月後には傷が治り、懸念されたがん化も確認されなかった。「注入した大量の幹細胞が次々と上皮細胞を作り出し、組織を再生した」と結論付けられた。

この新治療法は、人間へ応用できれば、難病の潰瘍性大腸炎やクローン病の治療、大腸がん手術後に大腸が狭くなる症状の緩和などに有効な治療法となることが期待されている。

研究論文は、米科学誌ネイチャー・メディスンに12日掲載された。

腹部筋肉を移植で 88才が がん克服

88歳で舌がんを克服した声楽家

2008年12月に舌がんが見つかり、2009年1月に舌の4分の3を切除した。しかし、腹部の筋肉を移植する手術を受けられたことで、発声練習や体力づくりに励んだ。そして、2010年春のロビーコンサートで術後初めての「舞台」に挑み、がん闘病以前にも劣らない歌声を響かせたのだ。

舌がんを克服した88歳の声楽家前川圓さんの、「もう一度歌いたい」との努力が実を結んだのだ。

舌がんの手術を乗り越えた声楽家前川圓さんは、ご年齢は88歳。「体はよみがえってくるもの」とあふれる笑顔を見せたそうだ。

2012年3月9日金曜日

がん克服して体外受精に成功した体験談

がん克服後の妊娠に成功

卵子保存した35歳女性が国内2例目

がん治療のために卵子ができなくなる恐れのあった女性(35)が、治療前に冷凍保存しておいた卵子を使って、がん克服後の妊娠に成功した。国内の民間不妊治療施設でつくる「A-PART日本支部」が8日に発表した。

「卵子冷凍保存によるがん治療後の妊娠」成功は、国内で2例目という。現在のところ、妊娠9週目で経過は順調だそうだ。

卵子を保存した「加藤レディスクリニック」(東京都新宿区)によると、女性が罹患したがんは、血液のがん「悪性リンパ腫」だった。冷凍保存の卵子でがん治療経験者が妊娠したのは、 2011年の大阪府の例が国内初だったが、無事に出産も成功した。

女性は悪性リンパ腫の抗がん剤治療中の2007年3月、 がん治療により卵子ができなくなる恐れがあったため、未受精卵子7個を採取。 がんを克服した後に結婚し、2011年8月から保存していた卵子を使った体外受精による不妊治療を始めていた。

最新の がん治療設備を東北初導入

山形県に重粒子線がん治療施設の構想
山形大に来月に準備室

重粒子線がん治療は、最新のがん治療機器で、精度が高く効果が大きいながらも、副作用の殆ど無い、夢の次世代がん治療機器だ。 北海道・東北では初の設置となる「重粒子線がん治療施設」を山形大学医学部に設置する構想を推進するため、設置準備室を4月1日に設置する。室長には、3月末で国立がん研究センター理事長を退任する嘉山孝正教授(62)が就く。

 嘉山教授は前 山形大学医学部長で、2004年ごろから付属病院への重粒子線がん治療施設の導入を提唱してきた。準備室は学長直属とし、スタッフは嘉山教授ら数人の予定。

 施設の導入費用が高額で約250億円が必要。さらに、維持費用として、年間18億円が不可欠との見込み。患者の治療費はそれでも1人約300万円と言われている高額医療なのだ。

 準備室では各メーカーの機器の評価や運用スタッフの規模、資金調達などについて検討する予定。

重粒子線がん治療は、がん細胞に重粒子線を照射して死滅させる治療法で、肺や前立腺など体の深部のがんを切らずに治療できる。

2012年3月8日木曜日

がんリスクと薬剤量と死亡に関連性

睡眠薬が がん(癌)のリスク増大と関連
睡眠薬を使用している人のがんリスクが、3~5倍に高まることが、米国の研究であきらかになった。
米国スクリプスクリニック・ビタビファミリー睡眠センター Scripps Clinic Viterbi Family Sleep Center(カリフォルニア州)の Daniel Kripke博士らの研究は、平均年齢54歳の1万500人以上を追跡して、睡眠薬とがんの関連性を調査した。被験者の健康状態はさまざまで、2002~2007年に平均約2.5年間、睡眠薬の処方を受けていた。
がんリスクと関連していると指摘された睡眠薬は、下記の睡眠薬(英文表記のものは日本国内では未承認の薬)。

  • ベンゾジアゼピン系薬剤のtemazepam(Restorilなど)、
  • 非ベンゾジアゼピン系薬剤のゾルピデム(Ambien 、日本での商品名:マイスリー)
  • eszopiclone(Lunesta)
  • zaleplon(Sonata)
  • バルビツレート系薬剤、
  • 鎮静薬の抗ヒスタミン薬
研究の結果として、 1年18回量未満を処方された群では非処方群に比べて死亡リスクが3.6倍、 18~132回量の処方群では4倍以上高かった。 132回量超の処方群では非処方群の死亡リスクの5倍に達した。この相関は年齢を問わず認められたが、18~55歳の人が最も相関が高かった。ゾルピデムを服用していた4,336人では265人、鎮静薬、睡眠薬ともに服用しなかった2万3,671人では295人が死亡した。
また、最も高用量の群では食道がんやリンパ腫、肺がん、大腸がん、前立腺がんなどの発症リスクも高かった。一方、白血病、乳がん、子宮がん、膀胱がん、白血病、メラノーマのリスク増大は指摘されなかった。この関連性は既存の健康障害では説明できず、睡眠薬が衝撃的な死亡の増加と新たながんの増加に関連している と指摘された。
睡眠導入(補助)薬の処方は夜間に十分な休息を必要とする人には有用かもしれないが、常用は死亡や特定のタイプのがん(癌)の発症につながる可能性が高いことが、新しい研究で示唆された。
研究成果は睡眠補助薬と死亡リスクの関連性を示したものに過ぎず、因果関係を示すものではないため、多くの専門家はこの知見から性急に何らかの結論を下さないよう警告しているが、興味深い結果だと言える。
研究成果は、医学誌「BMJ Open」オンライン版に2月27日掲載された。

2012年3月7日水曜日

がんを予防する5つの方法

生活習慣改善でがんリスク低下

国立がん研究センターが生活習慣とがん発生率との関連を大規模に調査したところ、生活習慣を少しでも見直すと、がんが発生するリスクが明確に低下することが証明された。

がんリスクを低減できる生活習慣の改善は下記に挙げられる5項目。
1つの生活習慣を改善するごとに、男性で14%、女性で9%もがんのリスクが低下する。複数項目の改善ならば がんリスクを激減させるわけだ。

  1. 喫煙 → 禁煙
  2. 飲酒 → 節酒
  3. 食事 → 減塩
  4. 運動 → 活動
  5. 肥満 → 適正体重

それぞれ具体的には、「節酒」は週にエタノール換算で150グラム程度、「減塩」は月に1回のタラコ4分の1腹程度、「活動」は、男性なら筋肉労働や激しいスポーツを1日1時間以上、女性なら歩いたり立ったりしている時間を1日3~8時間以上とされている。「適正体重」に関しては、男性はBMI値…21~27、女性でBMI値…19~25。
 
特筆すべきは、生活習慣改善でのがんリスク低下が、年齢に関係なく有効であることだ。調査対象者を60歳未満と60歳以上の年齢別に分析したが、予防効果に差は無く、年齢に関係無く同様にがん予防効果があったのだ。

 
この国立がん研究センターによる調査は非常に大規模かつ長期間で、1995~99年に岩手県、秋田県、長野県、沖縄県、茨城県、新潟県、高知県、長崎県、大阪府の10保健所管内に在住していた45~74歳のがんや循環器疾患の既往がない約8万人を対象に、2006年まで追跡調査を実施された。今まで、漠然とがん予防に効果があるとされてきた事象ではあるが、この大規模かつ長期間のデータによって科学的かつ統計的にがん予防効果が証明されたことは、健康を願う庶民にとっても僥倖と言えるだろう。

2012年3月6日火曜日

大腸がんの検査と最新治療法と生存率

日本人の死因の1位ががんである。3人に1人が がんで亡くなる。

増加が続くがんの中でも生活習慣が欧米化した影響によって急激に増加しているのが、大腸がんだ。
は女性のがんでは大腸がんの死亡者が1位、男性でも肺がん、胃がんに次ぐ3位に上昇している。ただし、近年の医療技術の進歩によって、早期発見で治療すれば、大腸がんはほぼ確実に治癒できるがんと位置づけられている。

<大腸がんの進行度分類:6ステージ>
大腸は水分を吸収する器官で、結腸、直腸S状部、直腸に分けられる。 大腸がんはがんの進行度によって、6段階のステージ(0、I、II、IIIa、IIIb、IV)に分類され、その進行度によって、下記の3つから治療法が選択される。

  • 抗がん剤治療
  • 手術=外科治療(内視鏡治療を含む)
  • 放射線治療

近年には、効果的な抗がん剤が開発されたことで、治療の選択肢は増えているのだ。

がんが大腸の粘膜の中に留まっている状態のステージ0であれば、ほぼ百パーセント治療することが可能。リンパ節転移の懸念が低く、腫瘍が一度に切除できると判断されたなら、内視鏡で取り除くこと簡単な手術で治療が完了できる場合も多い。

リンパ節転移まで進んでいないステージI・II では手術で腫瘍を取り除く。しかし近年の大腸がん手術では、腹部を切開しない「腹腔鏡(ふくくうきょう)手術」の適用が確立された。
腹腔鏡手術は、従来の開腹手術ように大きく切り開くことはしない。数カ所の数センチの"穴"を開けるだけで、そこから内視鏡や鉗子の手術機器を体内へ差し込み、腫瘍を取り除くのだ。切開手術に比べて傷が小さいので痛みが少なく、入院期間も大幅に短縮できる。これは、がん患者への負担を大幅に軽減できるため、手術後の体力・免疫力低下によるがんの転移再発予防にも寄与できる。
大腸がんのステージIの5年生存率は90%以上ステージIIは80~85%とされている。

大腸がんがリンパ節に転移した状態のステージIIIa・IIIbは、手術だけでなく抗がん剤治療の併用が必要となる。また、がんが肺や肝臓などに転移した状態のステージIVでは、抗がん剤や放射線療法などを選択することになる。

全てのがんに共通するように、大腸がんは術後の治療と経過観察が大切だ。特に再発への注意は万全を期せねばならない。しかし、大腸がんは再発しても治すことができる点が他のがんと違うのだ。

大腸がんを克服するためには、早期発見が不可欠であり、がん検診が極めて有効だ。大腸がん表面からの微量な出血がないかどうかを調べる便の潜血検査は、簡単で費用も500円~1000円程度。(自己負担分)。検便検査をするだけで死亡率減少効果を示す十分なデータがあることを、厚生労働省も推奨している。
さらに、大腸がんの詳細検査としては、全大腸内視鏡検査がある。大量の腸管洗浄液を飲んで便を全部出し、大腸全体を内視鏡で観察する方法なので非常に精度が高い。

大腸がんは一般的に遺伝性は少ないが、家族に大腸がん患者がいた場合には、生活環境が近いことから発病リスクが高いとみられるので、がん検査を頻繁にすることが推奨される。

大腸がん予防に最適なのは腸の動きを活発することで免疫力が高まる有酸素運動が有効なので、水泳やウオーキングなどが最適である。

2012年3月5日月曜日

膵臓がん、肺がん、胃がんの抗がん剤新薬を申請

胃がん、肺がん 抗がん剤新薬への適応追加申請

「胃癌および非小細胞肺癌」への適応を追加に承認申請を行ったのは、大鵬薬品。3月1日に抗がん剤アブラキサン点滴静注用100mg(一般名:パクリタキセル注射剤(アルブミン懸濁型))を、新薬として追加承認申請した。

抗がん剤アブラキサンは、既に「乳がん」への抗がん剤適用で保険承認を2010年7月に取得している。同剤は、人血清アルブミンにパクリタキセルを結合させ平均130nmにナノ粒子化した新剤型・新用量のパクリタキセル製剤。過敏症を予防するためのステロイドや抗ヒスタミン剤の前投薬が必須ではない特徴がある。
抗がん剤アブラキサンは、さらに適応を「非小細胞肺がん、膵がんおよび悪性黒色腫」に拡大するための開発が今も米国で継続されている。