2012年5月31日木曜日

胃がん, 前立腺がん 転移原因は特定たんぱく質

胃がんや前立腺のがん細胞の転移に関与する特定のたんぱく質が発見された。抗がん剤新薬の開発に繋がる可能性を秘めている。

発見された物質は「デイプル」と呼ばれるたんぱく質の一種。デイプルを培養した細胞実験は、胃や前立腺がんの転移を促す信号として知られる別のたんぱく質「ウィント」との相関関係が調べられた。その結果、デイプルを培養した細胞では、ウィントがデイプルを活性化してがん細胞が活性化されたが、デイプルの働きを抑えた細胞では、 がん細胞の活性化は見られなかった。つまり、「デイプル」の働きを抑制することで、「ウィント」の働きを抑制でき、それががん細胞の転移・増殖を抑制できるのだ。

さらに、マウスに傷を付けた実験では、皮膚の表面や真皮の中にあるデイプルが傷口の治癒に効果があることも判明した。今後は「デイプル」が人体にどう作用するかを調べ、 がんの予後の回復や転移の仕組みを解明し、胃がんや前立腺がんの抗がん剤新薬の開発が期待される。

研究は、名古屋大が英科学誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」に発表した。

2012年5月30日水曜日

肺がん新薬は世界初ALK遺伝子抑制効果

原因となる がん遺伝子の働きを阻む作用を持つ世界初のがん治療薬、肺がん治療薬「ザーコリ」(一般名クリゾチニブ)は、ファイザーから発売された。

ザーコリ(クリゾチブ)は、がんを増殖させる未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)融合遺伝子の働きを阻害することで、肺がんの進行を抑制できる。肺がん患者の多くを占める「非小細胞肺がん」の患者のうち、約3~5%はこの ALK遺伝子を持つという。

ザーコリの発売により、治療効果が見込まれる患者を予め遺伝子検査によって選んでから抗がん剤を投与する「個別化医療」が開始される。

2012年5月29日火曜日

マンゴスチンからがんに効く健康食品

フルーツのマンゴスチンの厚い果皮が、ん治療向けの健康食品として普及を図られる。

マンゴスチンの厚い果皮は、抗菌や抗カビ作用があることで知られており、東南アジア地域では古くから伝承薬として用いられてきた。

マンゴスチンの厚い果皮はポリフェノールの一種である「キサントン」という成分を含んでおり、この成分を抽出することで、 がん治療の補完代替医療に役立つ健康食品として実用化したのだ。

培養したヒトのがん細胞と大腸ポリープを発症したラットに対して、抽出したキトサンを加えると、低濃度で48時間後にがん細胞の6~7割が死滅した。

一方、ラットに対しては、0.05%の非常に薄い濃度でエサに混ぜて食べさせたところ、食べないラットにに比べてポリープの数が約半数に減少した。副作用も無かったという。

キサントンには抗酸化免疫活性化の作用があることから、 がん予防やがん再発を抑えるための機能性食品として販売が開始される。

肝がん分子標的薬の開発へ

肝臓がん向け分子標的薬の開発への基礎研究が前進した。

がんへの特効薬として脚光を浴びている分子標的薬はがん細胞を狙い撃ちする抗がん剤だが、肝臓がんには、効果的な分子標的薬が開発されてはいなかった。 2007年に米国で再発性や進行性肝臓がんに対して分子標的薬が使われるようになったが、その予後は悪く特効薬とは呼べる効果が発揮されなかった。そのため、肝臓がんの分子機構の解明による新たな治療法や予防法の開発が強く望まれていたのだ。

肝臓がん患者の27例のDNA=遺伝子情報(ゲノム)を解読したところ、 DNA複製に関わるクロマチン制御遺伝子の異常が高率で見つかったのだ。

つまり、肝臓がんの多くは、クロマチン制御遺伝子の異常を抑制することで、がんの発症予防や癌抑制、またはがん転移を阻止できるのだ。いよいよ肝臓がんには、有望な分子標的薬が登場する素地が固まってきたと言える。

研究は、理化学研究所と国立がん研究センターなどの研究チームが実施し、科学誌ネイチャー・ジェネティクスへ発表した。

2012年5月28日月曜日

睡眠中の”いびき”に がん が関連

がん死に関連する睡眠時呼吸障害 - 最大5倍のリスク上昇

睡眠中に”いびき”が酷く、一定時間呼吸が止まる「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」などの睡眠中の呼吸障害が、がんによる死亡リスク上昇と関連していることが判った。重度の睡眠時呼吸障害があった人のがんリスクは、障害が無かった人に比べて最大4.8倍のリスク上昇が確認された。

睡眠時呼吸障害は、心筋梗塞や心血管疾患だけでなく多くの疾患の死亡率を増加させることは既知だったが、これまでは、がんによる死亡率との関連は明確ではなかった。しかし、米国ウィスコンシン州の地域住民が1,522人を対象とした22年間の死亡データを調査した結果として、がん死と睡眠時呼吸障害の関連が明示されたのだ。

実際の調査では、1522人の調査対象者中の365人(24%)が「睡眠時呼吸障害あり」と診断され、この内の222人が軽度、84人が中等度、59人が重度と分類診断された。そして、追跡期間中に50人ががんによって死亡した。

データを分析すると、睡眠時呼吸障害のがんによる死亡と全死亡の関連が見られ、リスク上昇の程度は、軽度のグループで1.1倍、中等度のグループで2.0倍、重症のグループで4.8倍と、症状が重くなるほどにがん死のリスクも高まっていたのだ。この調査データ分析から睡眠時呼吸障害が、がん死リスクを増大させると結論された。

調査研究は、米ウィスコンシン医学・公衆衛生大学院によって実施され、 5月20日付の米医学誌「American Journal of Respiratory Critical Care Medicine」に報告された。

2012年5月25日金曜日

スキルス胃がんの克服体験談

胃がんは、長らく日本人の死因の上位に位置してきたが、最近は以前に比べて死亡率が大幅に減少している。

早期診断、早期治療の普及に加え、胃がんの最大の原因とされるピロリ菌の検査・駆除が進展したからだ。それでも、胃がんの発生は少ないわけではなく、胃がんを発症すれば命の保証はない。胃がんの中でも最も治療が困難な「スキルス胃がん」(ステルスではない!)から生還した30代男性の体験談。

胃がんの発見は偶然が重なった。

付き合いで酒を飲むことが多い上にプライベートでもほぼ毎日飲んでいた。学生時代からタバコも継続していたため、がんを発病する因子は揃っていたと言える。

少々飲み過ぎた時期があり、胃のもたれや痛みを感じるようになり会社の先輩に相談すると、胃カメラ検査を強く勧められた。その先輩は胃がんのために20代で逝った友人がいたのだ。

現在の胃がん検査は、無痛検査なら苦しまずに受けられるのは驚きだった。胃カメラは口から入れるタイプとは別に、鼻から入れる胃カメラが開発され、検査の負担は格段に緩やかになっているのだ。

そして、その検査で胃がんが見つかった。しかも「スキルス胃がん」。スキルス胃がんは、胃がんの中でも非常に治療成績の悪いタイプのがんなのだ。

ネットでも調べるも、スキルス胃がんの治療の困難さに愕然とし、一度は諦めかけた。しかし、検査をした医師の紹介で大学病院に行き、かなり大規模な手術で切除して助かることができたのだ。

当の執刀医さえも、運の良さを繰り返し強調するばかり。執刀医の手術の技術以上に、胃カメラで早期発見してくれた医師の眼力が感心されたという。

スキルス胃がんの大手術から4年が経過するも、がんの再発・転移ななく、予後は順調。

いくつかタイプのある胃がんの中でもスキルス胃がんの予後の悪さ=治療の難しさ=は突出しているのだが、早期に検査を受け、早期に適切な手術を受けたことが、スキルス胃がんの克服に繋がったと言える。

血便などの明らかな症状が出てからでは、「手遅れう」の可能性がある。喫煙や飲酒などのがリスクを自認しているなら、さらに気になる症状がある時には、年齢に関係なく、一日も早い検査が命を救うのだ。

2012年5月22日火曜日

がん治療に使える金額と先進医療の金額

「がん」の治療費に関わる意識調査の結果が発表された。

全体の6割の人が自身ががんを発症した場合に「保険金なども含めて治療費としては100万円以上は使えない」と答えている。この傾向は、世代・性別の属性別でも、総じて6割と変わらない。概算平均額で見るとがん治療費に使える総額の平均は130万円程度。やはり高齢層の方ががん治療に使える金額は多い傾向がある。

心臓病や脳血管疾患の治療法が進んだことから、間違いなく日本人の死因第一位となった「がん」。 がん治療には保険適用外の先進医療なども合わせ、多種多様な、そして比較的長い(とはいえ最近では平均入院日数は30日を切っている)治療を要するようになる。自然とその治療費は高額となる傾向があるものの、多くの人が「がんの平均治療費は100万円である」と聞くと「高い」と感じるようである。

がん」を発症した場合、保険金も合わせていくらまで使う事ができるか、という問いには、 6割の人が「50万円未満」「50~100万円未満」の領域に留まっていおり、現状では「100万円以上は少々難しい」というのが現実なのだ。

しかし先進医療などで、陽子線治療、重量子線治療 等を受けるには300万円以上、 免疫細胞療法で150万円前後、サプリメント療法でも月額数万円の治療費が必要となる。お金が無いゆえに、満足な、最先端のがん治療が受けられない「がん難民」の潜在率は6割近くに達していることになる。

米国では富裕層ほどに、先進医療に加え、サプリメントなどと組み合わせた混合医療の取組が顕著で、貧困ががんでの死亡を更に引き寄せる原因となっている。

日本が世界に誇れる唯一の社会制度「国民皆保険」の先進医療への承認が待望される。