前立腺がんの手術は、最新のロボット手術で行うと従来の開腹手術よりも患者の負担が大きく軽減される。
前立腺がんを従来の開腹手術で手術すると出血が平均500~600ccだが、ロボット手術では約100ccの出血で済む。ロボット手術は小さな穴を開けるだけで体を大きく切らないために、手術後の回復が早く、手術2日後には歩行開始、7日後には退院が可能なのだ。
ロボット支援前立腺全摘除術は、先進医療として4月1日から日本でも保険適用となった。これまでは全額自己負担の高額医療とされて自己負担が約140万円と非常に高額だったが、前立腺がんの手術が必要な患者には朗報となった。
ロボット手術とは全自動で機械が手術されるものではなく、執刀医の手術補助システム。患者に開けた小さな穴から4本のロボットアームを挿入して施術する。執刀医は手術台横のコンソールに座り、ロボットアームの先端に装着された内視鏡や超音波メスを操作することで手術される。内視鏡の画像は3Dハイビジョンの高画質で最大15倍までズーム拡大が可能。医師は画像を立体ビューワで見ながらコントローラを操作することで、ロボットアームがその動きを再現するという仕組み。
内視鏡が3Dで高画質さらにズームできるために、執刀医自身の目が手術処置している部位の目前のような感覚で手術できるのだ。ロボットアームは人間の指先の震えも取り除くスムーズな動きで、執刀医の指の5cmの動きに対して、手術器具は1cmの動きで対応することから、精度も高い。
前立腺がんの手術は、神経や血管を温存する緻密さが必須であり、その精度が手術後の排尿・性機能を大きく左右した。従来は、一部の名医にしか不可能だった高精度の手術が、一般の医師にも簡単に可能になったロボット手術は大変ながん治療技術なのだ。
前立腺がんを高精度に執刀できるロボットは、米国製の「ダヴィンチ」。米国では前立腺がんの根治手術の90%はこの手術ロボット「ダヴィンチ」で手術されている。しかし、日本国内の導入台数は2011年にようやく30台を超えた程度。従来の医師の技量に頼ったリスクの高い開腹手術が多く、手術ロボット「ダヴィンチ」が導入された病院でも経験を積んでいる医師はまだ少ない。ロボット手術の100例以上の実績を持つ病院は稀少なのだ。
日本でも今後の前立腺がんの手術は、保険適用を機にロボット手術が標準となるだろう。
2012年3月30日金曜日
前立腺がん手術の後遺症を予防
2012年3月29日木曜日
前立腺がんの原因、予防と食事
遠くない過去まで日本人の前立腺がんの発症率は、欧米人に対してわずか4%程度と非常に少なかった。しかし、食が西洋化した近年は前立腺がんと大腸がんの発症が著しい増加傾向となっている。
中高年の男性に発症しやすい前立腺がんの要因は、加齢に伴って女性ホルモンが減少し、ホルモンバランスが崩れることが原因だと解っている。
このホルモンのバランスを調整できる成分が、日本の伝統食や豆類に多く含まれているイソフラボンという成分。大豆には“イソフラボン”が多く含まれることから、食毎に大豆が原料の味噌汁、大豆製品である豆腐や納豆をおかずに食べるだけで、自然とがん予防食が摂取されていたのだ。
しかし、現代の食生活では、大豆製品を通じてイソフラボンを得る機会が大幅に減ってしまった。毎食摂取する必要はないものの、納豆や豆腐、豆乳などの大豆製品は積極的に摂ることで、前立腺がんの予防には極めて有効だと再認識したい。その他に前立腺がんの予防には、抗酸化作用が高い成分=リコピンが豊富なトマトなどの野菜も有効。
伝統的な日本食は、前立腺がん、乳がんを予防する優れた機能的な食品だったのだ。
2012年3月28日水曜日
肝臓転移した大腸がんに新治療法
難治性肝臓がんの生存率改善 微小球放射線塞栓療法
難治性肝臓がんの生存率を改善 微小球放射線塞栓療法
大腸がん(結腸がん・直腸がん)の約50%でがん転移が発生し、その多くは肝臓への転移でがんが広がってしまう。大腸がん患者の約90%は、最終的には肝臓へ転移したがんによる肝不全のために死亡するのだ。結腸がん・直腸がんは、2008年に米国で15万3000人、欧州では33万3000人が発症している。大腸がんは食生活に関連が大きいがんで、アジアでは韓国での発症例が多い。食の西洋化が進展した日本でも、非常に患者数が激増している がん なのだ。
この結腸がん・直腸がん から転移した難治性 肝臓がんに新しい治療方法の研究が進んでいる。
新しい肝臓がん治療方法は、「放射線塞栓療法」。「放射線塞栓療法」は選択的体内照射療法(SIRT)とも呼ばれ、放射性物質(イットリウム)の微小球(SIR-スフェアズのマイクロスフェア)を使って治療する新たな大腸がん治療手法だ。微小球は放射線医が体内に設置し、健康な肝臓組織には影響を与えずに選択的に放射線をがん患部へ照射する。
この新治療法を研究・推進しているのは、オーストラリアはシドニーのセント・ビンセント病院。研究結果は腫瘍外科学会の第65回年次がんシンポジウムで発表されたが、治療の難しい肝臓がん患者に対して、放射線塞栓療法によって生存率が2~3倍に改善したと報告された。
実験で新しいがん治療法の研究対象となったのは、化学療法が難しいとされた肝臓がん患者が中心の463人。
結果は、結腸がん・直腸がんから肝臓がんにがん転移した251人のがん患者のうち、放射線塞栓療法を受けた220人の患者の平均生存期間は11.6ヶ月。これに対し標準的または最高の支持療法を受けた31人の患者では6.6ヶ月。新治療法の効果で生存期間は約2倍。
その他の適用例は、胆嚢がん41例、神経内分泌がん40例、肝細胞がん27例、すい臓がん13例、乳がん11例、胃がん9例、その他のがん71例で、いずれも、がんが肝臓へ転移したがん患者212人。このうちSIR-スフェアズ微小球による治療を受けた180人の患者の平均生存期間は9.5カ月だったが、標準的または最高の支持療法を受けた32人の患者では2.6カ月だった。新治療法の効果で生存期間は約3倍。
研究報告では、放射線塞栓療法は、転移した肝臓がんに対して、従来のがん治療法よりも2倍~3倍の生存期間の向上と、大幅な病状改善に効果があると結論された。
今後は、放射線塞栓療法の評価についてさらに大規模の治験を実施しつつ、さらに肝細胞がんについても試験が行われる予定だ。
2012年3月27日火曜日
自動追尾する高精度肺がん治療
日帰りでがんを治療できる超高精度スナイパーマシンとは!?
新世代の放射線がん治療機器「サイバーナイフ」を用いた 切らない日帰りがん治療の普及が始まった。
「サイバーナイフ」は放射線治療機器の一種だが、モニターシステムを統合した大掛かりな がん治療システムだ。
「サイバーナイフ」の放射線発射装置である「リニアック」は、放射線を先端からがん細胞に最小5mmの放射線ビームを放つ心臓部だ。このビーム口径は世界最小クラスの細さでこれがまず治療精度を高めている。
そして、横たわるがん患者の周囲を「リニアック」が 1200通りの角度と方向からがん細胞に向かって細い放射線ビームを照射する。がん細胞だけを様々な方位から細く狙い打つことで、正常細胞のダメージを最小化しつつ、がん細胞だけに繰り返し、細く放射線を照射する治療機器なのだ。
もう一つのサイバーナイフの特色が呼吸によるがん部位の自動追尾だ。呼吸することで肺だけなくがん患部も微妙に動いてしまうが、このがん患部の動きに同期して、放射線も細かく動きながらビーム照射されるのだ。
がん患部を追尾する情報は、天井に取り付けられた3台のカメラからの情報から分析される。 2台はX線カメラで、残る1台が赤外線カメラ。
患者は、体の動きが最小化されるように固定用マット敷いたベッドに横たわり、 LEDライトをお腹に装着する。
システムは、体内のがんを直接に見ているのではなく、がん細胞の至近に「金マーカー」と呼ばれる目印が入れられている。金マーカーは、太さ1.1mm、長さ5mmの微小。この「金マーカー」が呼吸に合わせてがんと同じ動きをするのをX線カメラで追尾する。
金マーカーのトレースはX線カメラで行われるが、 X線を患部周囲へ投影し続けるのは放射線被爆となるので良くない。そこで体に害の無い赤外線カメラでLEDライトと金マーカーの距離と呼吸による動きの相関を記憶しておき、呼吸によって動きがん患部の位置を補足し、トレースし続けるのだ。サイバーナイフによるがん治療は1回30分間程度で、入院の必要も無い。 2週間で計4回程度の治療となる。
1.5cmの肺がんが、1ヵ月後にはがんが消えさった例もある
サイバーナイフで治療が可能ながんは、今のところ肺がん、脊椎がん、脳腫瘍などである。
残念ながら放射線に弱い粘膜を持つ消化器系のがんには使えないために、胃がん、大腸がん には使えない。
しかし、海外では乳がん治療にサイバーナイフを利用して効果が上がっているとの報告もある。今後は、乳がん に続き、肝臓がんやすい臓がんの治療への応用に強い期待が寄せられている。
切らずに、日帰り治療でがんを治す時代なのです。
大学病院のがん治療用レシピ
がん患者向けに栄養士がレシピ本
大学病院の栄養士さんが、がん患者の専用のレシピ本を出版したことが話題になっている。がん患者は、治療のための抗がん剤や放射線治療の副作用で食欲が落ちてしまい、さらには口内炎が多く、治療状況に応じたきめ細かな栄養管理が不可欠だ。
島根大付属病院の川口美喜子医師(副部長)が、栄養士の青山広美さん を“がん専任栄養士”に任命し、がん患者のためのメニュー作りを依頼したのがはじまり。青山さんは病室を回り、がん患者1人ひとりの病状を知るとともに、病院食への不満や希望などを聞き、 「がん患者に食べる喜びを」と、レシピに工夫を凝らしたのだ。 小児がん治療のために口内炎や吐き気で食欲がない女の子からは「お子さまランチが食べたい」とのお願い、結腸がんから肝臓転移術後の60代男性からは「普通の家庭の食事がほしい」との要望。その他にも「何も食べたくない」「魚のにおいが気になる」などの意見も多く出たそうだ。
そして、工夫を重ねて、
- 嚥下障害(飲み込みに問題)がある場合には、卵に浸したむせないパンがゆ
- 口内炎には口がすっきりするモモとミカンのシャーベット
- 口に入れやすいスティックおにぎり
- 酒好きだった患者には居酒屋風くし焼き-
この300メニューの中から、厳選した73メニューをレシピ集として纏めた出版するに至った。川口副部長は「患者さんの食事対応で一番大切なことは、わずかな量でも口から食事をとることと、満足感です」と話している。
「73の食事レシピ」(127ページ)は、医学書院(東京都)から1冊1890円で発売中。
2012年3月26日月曜日
がん新薬の実用化へ28億円の助成
28億円の予算助成で がん新薬の実用化を後押し
前立腺がんに対する新薬の治験が、6月に開始される。
治験を実施するのは、九州は久留米大の先端癌治療研究センター。
患者の免疫力を活用してがん細胞だけを攻撃する「がんペプチドワクチン」の新薬だ。
この治験には厚生労働省からの助成が支給される。
厚生労働省は2012年度から、大学などが始める新薬承認に向けた治験の助成に乗り出しているのだ。
研究段階にとどまっている難治性がんや希少がん治療薬の実用化を後押しするための助成制度で、
久留米大(福岡県久留米市)のがんワクチンの治験への助成が第一弾となる。
この助成制度は、患者の少ないがん治療薬の研究開発費を助成することで、
新薬を早期に治験段階に引き上げるための、新たな取り組み。
この助成制度の対象は、難治性の膵臓がんや肺がん、肉腫、小児がん。
厚生労働省では九州に患者が多い難治性血液がん、成人T細胞白血病(ATL)も対象として含める方針で、
2012年度予算案に関連予算28億6千万円を盛り込み、全国で8グループが助成対象となった。
難治性がんや希少がんは、患者の数が少ないために、
新薬を開発しても研究投資に見合う収益が上がりにくいされ、民間の製薬会社では敬遠されてきた。
一方、大学などの研究期間では、開発に取り組んでも費用不足から臨床データを収集する治験段階へ進めず、
足踏みしている新薬研究が多いのだ。
今回の助成制度では、対象を企業だけでなく大学などの研究グループにも拡大した。
新薬承認に必要な3段階の治験のうち、第2段階までの経費を厚生労働省の予算で負担する仕組みだ。
安全性や有効性を確認された第2段階の治験まで終えれば、民間企業の開発は促される。
治験最終段階の第3段階に際しては、大学から製薬会社へ引き継がれ、新薬が実用化される。
厚生労働省では がん細胞の特定の分子だけ狙い撃つ「分子標的薬」の新型抗がん剤の実用化研究も対象として期待している。
少しでも多くのがん新薬を研究段階から早期に治験を実施し、有効な新薬を待望するがん患者に届けられる助成制度だ。
2012年3月23日金曜日
すい臓がん死亡率を激減
膵臓がんを予防できる安く安全で手軽な方法が発見された。
鎮痛剤アスピリンを毎日服用することで、がんの発病が予防できるのだ。この興味深い研究は、医学誌ランセットに21日発表された。
鎮痛剤アスピリンを毎日少量服薬した人は、3年後にがんを発病する確率が服用しなかった人よりも24%も低下する。さらに、量に関わらず毎日アスピリンを飲んだ人は5年後にがんで死亡する確率が37%低下。このがんリスク低下現象は男女によらず、効果が見られた。また、アスピリンの副作用とされる内出血のリスクも3,4年で低下するとされた。
アスピリンは、約2400年前の古代ギリシア医学者のヒポクラテスの時代に起源を持つ鎮痛剤。柳の樹皮に含まれるサリシンという成分が原材料になっている。今では、薬局で1粒約2円50銭程度の安価で購入が可能だ。
既に2007年には、アスピリンが長期的にがんによる死亡の確率を低下させると、研究報告がされていた。しかし、がん予防効果を得るには8年以上の継続摂取が必要とされていたのだ。ところが、今回の研究では、短期間でもアスピリンにはがん予防効果があることが判明したのだ。さらにがん治療にも利用できる可能性が示されている。
アスピリンは安い価格と、高い安全性という2点で、非常に有効ながん予防策にできる。
家族にがん、特にすい臓がん患者を持つ人は、アスピリンを日常的に服用することでがんリスクが低下する可能性が高いので、強く推奨される。