2012年5月11日金曜日

化粧品成分が乳がんリスク

化粧品や食品に含まれる低濃度のカドミウムでも、乳がんを発症・転移するリスクが高まることが判明した。

カドミウムは体内に入ると、女性ホルモンのエストロゲンに似た作用を示すことがあるため、特定の化粧品に含まれることがある。低濃度でもカドミウムに慢性的に曝露された細胞は、高レベルのSDF-1というタンパク質が発生することが判明したのだ。このSDF-1というタンパク質は、がん(腫瘍)の浸潤および転移に関連する物質=がんリスク物質として既知なのだ。

化粧品以外にもカドミウムは農業用の肥料に添加されることも多い。食品も、化粧品も、がんリスクを避けるのに越したことは無いだろう。

新たな乳がんリスクに関する研究は、米ドミニカン大学カリフォルニア(サンラファエル)生化学准教授のMaggie Louie氏が、米サンディエゴにて開催された実験生物学(Experimental Biology)学会年次集会で発表した。

2012年5月10日木曜日

抗がん剤投与に画期的な新素材技術

抗がん剤の効率的かつ効果的な投与方法が開発された。

同量の抗がん剤を投与しても、副作用最小化され、効果は倍増できるという新手法は、「フレークシェルカプセル」と呼ばれる微小カプセルを利用したドラッグデリバリシステム(DDS)。

ドラッグデリバリシステム(DDS)とは、がん患者の病理部位だけに薬物を運ぶという仕組みだ。ドラッグデリバリシステム(DDS)に不可欠なのは、マイクロメートルもしくはナノメートルサイズのカプセルで、このカプセルに薬物を封入することで、がんなどの病理部位だけに薬物を確実に送り込むことを狙っている。

旧来手法で、抗がん剤を体内へ投与しても、投与した薬物ががん患部へ到達する前に相当量が吸収・分解されてしまう問題があった。がん患部以外に抗がん剤が分散することが副作用の原因であり、がん患部への治療効果を低減してしまう。そこで、抗がん剤の放出持続時間を自在に制御し、薬剤の有効時間を数倍に延長できるカプセルが開発されたのだ。物質・材料研究機構(NIMS)が開発に成功した新開発のカプセルは、無機物のナノメートル厚のフレーク状物体「ナノシート」でできた伸縮自在のカプセルで、「フレークシェルカプセル」と呼ばれる。開発された無機物のフレークシェルカプセルでは、カプセルの大きさが簡単に調節でき、さらには薬物を通過させる孔構造の調整も容易である。つまり、希望の量の薬剤を内部に封入し、かつ、それを希望の速度でがん患部へ持続的に放出することができるのだ。がんの状態に合わせ、量や持続時間を自在に調節できることは、非常に優れた抗がん剤物運搬体と言える。

さらに、「フレークシェルカプセル」は、従来よりも多くの抗がん剤をカプセル内に封入できると同時に、抗がん剤の放出速度を抑えることができる。従来のカプセルに比べて、抗がん剤放出持続時間が格段に長くすることもでき、 1つのフレークシェルカプセルで数日間、持続的に抗がん剤を投与することが可能となった。

また、表面に特定のがん標的を認識できる抗体を結合させれば、特定の病的部位にのみ薬物を送り込む「がんミサイル療法」への応用も可能なのだ。

構造を自在に調節できるカプセルの開発によって、既存の抗がん剤によるがん治療にても飛躍的に治療効果を高められる可能性を秘めている。

2012年5月9日水曜日

余命を延ばす 抗がん効果の香辛料とは?

大腸がん治療には、ウコン(香辛料ターメリック)が効果的である。

カレーなどの料理に色や香り付けに使われる鮮やかな黄色の香辛料、ターメリック=「ウコン」。インド料理やタイ料理で頻繁に使用される香辛料として有名だ。

このターメリック(うこん)に含まれる代表的な成分が「クルクミン」。このクルクミンという成分は、大腸がん治療時に抗がん剤のがん細胞殺傷力を高める効果があるのだ。この効果は、既に動物実験では実証されている。

そして、ついにクルクミンの抗がん治療への有効性が臨床試験されることになった。大腸がん治療へのスパイス成分クルクミンの効果を検証試験するのは、イギリスのレスター大学(University of Leicester) のがん医療研究センターECMC(Experimental Cancer Medicine Center)の研究チーム。

従来の大腸がん治療の問題点として、抗がん剤治療の際の副作用の負担が大き過ぎることで、多くのがん患者が抗がん治療を長期間継続できなかった。しかし、クルクミンの抗がん剤助長効果が有効ならば、投与する抗がん剤の量を減らすことができ、がん患者への副作用も減少されて、治療をより長く=余命を延長できることになる。

大腸がん患者は、ウコン(ターメリック)を使用した料理を食べることが抗がん剤治療を効果的にできそうだ。

余命延長抗がん剤の副作用とQOL

「大往生したけりゃ医療とかかわるな」(幻冬舎新書)の著者であり、医師である中村仁一氏は、「大往生したければ医療と深く関わるな」「がんで死ぬのがもっともよい」と主張する。

京都の社会福祉法人老人ホーム「同和園」の常勤医を務めながら、数百例のお年寄りの自然死を見送った経験からの氏独特の意見だ。ここには、日本の老人医療の問題点と 各自が持つべき死生観が凝縮されている。

「医者が「大往生したかったら医療に深く関わるな」と発現すると、皆から いぶかられる。しかし、病院では、年寄りが 苦痛の果てに死んでいる現実があると。もしも、病院に行かなければ、もしも、医療が濃厚に介入しなかったら。きっと穏やかな死を迎えていたはずなのに 。
病気やケガを治すのは、基本的には、人間が生来持っている「自然治癒力」。医者はそれを助ける「お助けマン」、薬は「お助け物質」に過ぎないと。医療は年老いたものを若返らすこともできなければ、死を防ぐこともできない。生物は当たり前に「老いと死」には無力なのだ。
たとえばがん。「がん」とは すなわち「老化」。研究者によって大小はあるが人間は毎日5000個ぐらい細胞ががん化している。しかし、身体に自然に備わっている免疫の力でがん細胞を退治しているのでがんが発病しないだけだ。ただ、年をとると免疫力が自然と衰えるために、年寄りはがんになる。当たり前のことで、驚くことではない。
がんの予防には「がんに ならないようにする」一次予防と、「がんを早く見つける」二次予防がある。二次予防には「早過ぎる死」を防ぐという目的もある。しかし、繁殖を終え、生きものとしての"賞味期限"の切れた年寄りにとっては、最早「早すぎる死」というものは存在しないはずと笑いながら断ずる。
まだ成すべきライフワークが残っている年寄りは別として、普通の年寄りに「がん検診」は意味が無いと言えるだろう。鮭は産卵後間なしに息絶え、一年草は種を宿すと枯れ、つまりは、繁殖を終えたら死ぬ、という自然界の“掟”は、人間にも当てはまると説く。
"がんは強烈に痛むもの"と一般には理解されており、ホスピスの調査でもがんで痛むのは7割程度。逆の視点では、3割はがんでも痛まないのだ。つまり3人に1人はがんでも痛まない最後を迎えられる。
老人ホームでの実例としては、食が細り、顔色が悪くなってやせてきたので、病院で検査したら手の施しようがない「末期がん」と診断されとされた患者が、そのまま何もしない選択をしたが、最後まで痛まずに往生した。
少なくとも発見時に痛みのない手遅れのがんは最後まで痛まないということは確実に言える。
塊になるがん(固形がん=胃がん・肺がん・大腸がんなど)は抗がん剤を使っても、多少小さくなることはあっても、消滅することは無い。しかし、抗がん剤はいわば"猛毒"なので、正常な身体の組織や細胞に甚大な被害を与え、ヨレヨレの状態になり、QOL(生の質)を激しく貶める。
"繁殖"を終えたら、抗がん剤は使わない方がいい。延命効果はなくとも必ず縮命効果はあるのが抗がん剤。数ヶ月の延命が、果たしてどういう状態の延命と”生”となるのがを考えるべき。青息吐息のヨレヨレの状態で生きることに意味のある人間は少ない。長生きするつもりが、苦しんだ末に命が短くなっているがん患者が多いのだ。
「がんで死ぬんじゃないよ、がんの治療で死ぬんだよ」と。

中村医師の言には、確かに一理あるだろう。

生物としての生死の摂理と抗がん剤の功罪は熟考にも余りある。たしかに「がんの余命延長」と引換に がん患者のほぼ全員が直面する痛みと辛さは、その時間と質を考えざるをえない。家族のエゴと言われる場合さえあるかもしれない。

しかし、それでも人類はがんを克服するべく研究を重ねている。副作用の少ない、がんを完治する新薬は、遠からず開発されるはず。そまでの数年間~数十年間は、生への"業"の深さと、達観した死の受け入れとの天秤に、個々人の人生観が問われるのだ。

ただ、がん回復への渇望を誰しもが持ち続けることには変わりない。

がん利用方針の選択する際の参考にはなるだろう。

2012年5月7日月曜日

新薬・特効薬へ肝臓がんDNA解析

胆管がんは、生命に危険のある肝臓がんの一種だ。全世界の肝臓がんの10~25%を 胆管がんが占めているおり、患者が多く、新薬へのニーズは高い。

実は胆管がんは、特にアジアでは肝吸虫感染が原因で罹患することが判っている。肝吸虫が感染している鯉(コイ)や鮒(フナ)を食べることで、人間に感染するのだ。

この肝吸虫が原因の胆管がんに関して、影響を受けるDNAが解読され成果が上がった。発病に関連すると見られる15個の遺伝子に関して、 46症例でスクリーニングを行い、がん発病と関連する遺伝子変異の出現率が調べられたのだ。その結果、数個の遺伝子の体細胞変異ががんとの関連性が確認され、さらには、胆管がんに関与する変異と見られる10個の遺伝子が新たに同定された。

がん発病遺伝子が特定されることは、そのがんの特効薬となりうる分子標的薬の開発へに繋がる第一歩だ。

胆管がんへの特効薬となりうる新薬開発が待たれる。

2012年5月2日水曜日

肺癌重粒子線治療に混合診療を承認

非小細胞肺癌に対する重粒子線1回照射による治療が、「先進医療」として承認されたことから、保険診療との混合診療が認められることになった。

非小細胞肺癌に対する重粒子線1回照射は、放射線医学総合研究所 重粒子医科学センターで約9年間の臨床試験で実績を上げている。そして、ついに3月16日の重粒子線治療ネットワーク会議にて先進医療への移行が認められたのだ。

日本での肺がんのがん死亡者数は年々増加し、 1998年に胃がんを抜いて1位となった。肺がんの既存治療は、手術や、抗がん剤や放射線照射の組合せで行われており、早期の肺がんならば、ピンポイントの放射線治療は手術と同程度の成績が得られる。

重粒子線は放射線の一種であり、体の中の一定の深さで線量が最も強くなるようにコントロールできるのだ。さらに、集中性も優れているので、体外からの照射でも、体の表面や正常組織への影響を最小限で、深部のがん病巣だけに集中的に照射できる。

「日帰りの肺がん治療」が実現することになり、さらにその5年生存率が70%にまで高められている。

肺がん患者の肉体的・経済的負担の軽減と早期社会復帰が実現するだろう。

大腸がん の治療に効果の “新薬”

大腸がん治療にアスピリンが効果があることを判った。

アスピリンと非ステロイド抗炎症薬(NSAID)に大腸がん予防効果があることは既に知られていたが、大腸がん診断後にもアスピリンを治療に用いることで死亡率が改善することが判明したのだ。

調査を実施したのは、オランダのライデン大学医療センター。がん登録データを用いた大規模な観察研究を実施し、大腸がん(結腸がん)の診断後NI、補助療法としてアスピリンが効果的である可能性を示唆した。

アスピリンの治療効果は、今のところ結腸がんのみで確認され,非アスピリン使用者と比較して死亡率が35%低かった。