結腸・直腸がん治療の抗がん剤新薬が、新たに日本で承認申請された。
新薬は抗がん剤「TAS-102」(トリフルリジンとチピラシル塩酸塩の配合剤)。適応は、「治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸がん」とされ、臨床試験では約3ヶ月の余命延長の効果があるとされた。
抗がん剤新薬「TAS-102」は経口薬で、大鵬薬品が開発中。
天然痘治療などのワクチン遺伝子を組み換えて開発されたがんウイルスによる新しいがん治療法が開発されている。
遺伝子組み換えられたワクシニアがんウイルスは、患者の免疫細胞が、がん細胞を集中的に攻撃するよう組み換えられている。さらにワクシニアがんウイルスは、患者のがん細胞内で増殖することで がん細胞を死滅させるのだ。
既に臨床試験が開始されており、 がん細胞の増殖が抑制され、がんへの血液の供給が減少する効果が確認されている。 がん細胞を破壊し、がんに対する免疫応答を誘導するように遺伝子操作されたワクシニアウイルスが、 肝細胞がん患者の生存期間を延長したのだ。進行性の肝細胞がん患者30人に新薬を4週間投与した結果、低用量が投与された14人の肝細胞がん患者は平均6.7か月、高用量が投与された16人の肝細胞がん患者は平均14.1か月の生存期間が延長した。臨床試験では、1人の患者に嘔吐があった以外は、重い副作用は無かった。
がん溶解性ウイルスは、肝細胞がんだけでなく がん治療の有望な新治療法として注目されている。
ワクシニアがんウイルスの研究は、英医学誌「Nature Medicine」に発表された。
新しいがん治療法として期待が高まっている 「がんペプチドワクチン治療」 の臨床試験が開始される。
治験対象は、治療が困難とされる食道がんと 膵臓がん患者で、各40人に対して、 新治療法の臨床試験が実施される。
新薬のペプチドワクチンは、 がん患者自身の免疫力を活用する新治療法。 がん細胞を攻撃する免疫細胞のリンパ球が、 がん細胞の表面に発現する特有のペプチドというアミノ酸化合物をがん細胞攻撃の目印にする性質を利用している。ペプチドを体外で人工的に合成して投与し、リンパ球を増殖させてがんを治療する。 現在のがんの3大療法とされる外科手術、抗がん剤化学療法、放射線療法による治療が困難ながん患者に対する、第4の治療法として期待が高まっている。
今回の新薬の臨床試験が最も特徴的なのは、全国で初めて、その費用が寄付で賄われることだ。
治験に要する費用を、 がん患者団体 「市民のためのがんペプチドワクチンの会」として、全国から寄付金を募集するのだ。 寄付金の目標は、3年間で3000万円。
ペプチドワクチンによるがん治療は、製薬会社主導での効果検証も進んでいるが、白血球の抗原が多い患者だけを対象としている。今回の治験では、日本人では少ない部類に入る特殊な抗原タイプのがん患者も治験の対象とすることも注目されている。
食道がん、すい臓がんに対するがんのペプチドワクチンは、既に安全性確認の段階を終了し、一日も早い新薬の完成が待たれている状況なのだ。
全く新しいがん治療法である「腫瘍治療電場(TTF)」がイスラエル工科大学で発明された。
TTFとは、低強度の「電場(電界)」を利用した新しいがん治療法である。電気が流れている周囲には必ず電場が生じている。この電荷(個々の物体や粒子などがもつ電気)を持つものを引き寄せて作用する。
TTFによるがん治療では、電場発生装置に接続されたトランスデューサーを体外に装着し、人工的に作り出された電場によって体内のがん細胞の分裂を防ぎ死滅させる。
がん細胞が人体の中で最も強い電荷を持つ物質であることを利用した治療法なのだ。 TTFによるがん治療の臨床試験では、 抗がん剤による化学療法に頻発する痛み、感染症、吐き気、下痢、便秘、疲労etcの副作用も無いとされる。
既に20種類以上のがん細胞を対象にTTFによるがん治療が実験され、それら全てのがん治療に効果が発揮された。既に膠芽腫と肺がんに関しては、臨床試験が実施され、成功を収めたのだ。特筆すべきは、がん細胞以外の正常な細胞には影響無く治療ができた事実だろう。
現在では、化学療法や放射線治療とTTFを組み合わせることで、大きな相乗効果があることが分かった。米国ハーバード大学では、 TTFによるがん治療の効果を最大限に高めるための既存治療法との最適な組み合わせに関する研究が進められている。
現在のがん治療は「外科手術」「放射線療法」「抗がん剤療法」の3つの治療法が中心とされているが、近い将来には「TTF」治療が加わる可能性は高いだろう。全く新しい技術原理を利用した新しいがん治療法「TTF」が、 がんを克服する強力な治療法として登場する日へ期待は膨らむ。
すい臓がんは、消化器がんのなかで最も予後の悪いがんの一種だが、その余命延長に有効な抗がん剤の効果が確認された。
膵臓(すい臓)は胃の裏側に位置し、十二指腸に接しており横に細長い臓器である。そのため、早期発見が困難なだけでなく、 2cm以下の小さながんであっても、非常に早い時期に周辺臓器への浸潤、近くのリンパ節転移、肝臓などへの遠隔転移が発生してしまうのだ。 すい臓がんは、最も悪性度の高いがん だと言える。
すい臓がんの切除手術後の抗がん剤治療に際して、従来の標準治療薬とされる抗がん剤塩酸ゲムシタビン単剤よりも、 抗がん剤TS-1(ティーエスワン)単剤の方が、生存期間を大幅に延長させることが証明された。
すい臓がんの切除手術を受けたステージ2, 3のがん患者385例に対する治験の結果だ。
すい臓がんに効果的な抗がん剤 TS-1は、体表面積に合わせて規定された投与量を1日2回、 28日間連続して経口摂取する。その後14日間休薬する42日を1クールとし、4クール(6ヶ月間)で実施した結果だ。
すい臓がん治療に用いることのできる抗がん剤は限られているため、切除後の補助化学療法としてのTS-1の有効性は朗報と言えるだろう。
乳がん、皮膚がんの特効薬新薬が、短期間に開発される可能性が高まっている。
治療が難しいタイプの乳がん と 皮膚がんの一種である悪性黒色腫に関して、患者の強力な発がん原因になっている変異遺伝子が発見特定された。
難治性の乳がん、皮膚がんの線維肉腫の細胞株に関して、発がん能力を持つ遺伝子を網羅的に調べることで、遺伝子「RAC1」と「RAC2」に突然変異のある事実を発見したのだ。
これらの2つの遺伝子は、細胞の骨格たんぱく質を制御する役割を担っているのだが、変異したことで、常に活性化してしまい がん細胞を異常に増殖させ続けていたのだ。この2遺伝子の変異があるがん患者は、悪性黒色腫では5%、難治性の乳がんでは3%が保有していると推定されている。全体のがん患者に占める割合は小さいが、この変異遺伝子が原因でがん細胞が増殖しいるがん治療に対しては、治療薬が極めて高い劇的な治療効果を得ることができるのだ。
この発見によって乳がん、皮膚がんの特効薬が短期間に開発される可能性が高まっている。まず、対象のがん患者の変異遺伝子の有無を検出する方法を開発し、その変異遺伝子の働きを抑える薬剤を見つけることで、非常に効果の高いがん治療薬が開発できるのだ。
この発見をした東京大,自治医科大,がん研究所の研究チームは、 肺がんに関して同様の肺がん遺伝子を発見し、その4年後には肺がんの新治療薬を開発した実績があるため、 乳がん、皮膚がんにも劇的な効果のある新薬への期待が非常に高まっている。
転移性すい臓がんの新薬として抗がん剤「アブラキサン」の臨床試験(治験)で良好な治療結果が得られた。
すい臓がん新薬「アブラキサン」の第3相試験では、既存の抗がん剤であるゲムシタビンとアブラキサンを併用したすい臓がん治療を実施した。 新薬治療の結果、既存抗がん剤のゲムシタビン単独での治療と比較して、余命の延長効果が示されたのだ。
新薬によるすい臓がん治療では、全生存期間が改善し、1年生存率が59%増、2年生存率は2倍へと大幅に改善した。さらに、無増悪生存期間や全奏功率などの指標においても、 新薬の併用療法は優れた成績を示した。
最も重要なことは、新薬による治療でも、深刻な副作用が出現しなかったことだ。
すい臓がん治療薬「アブラキサン」は、スイスのセルジーンが開発中の新薬で、 抗がん剤パクリタキセルをヒトアルブミンと結合させた懸濁注射剤である。