2012年4月10日火曜日

培養免疫細胞での がん治療が臨床開始

培養免疫細胞を用いたがん治療の臨床研究

培養したナチュラルキラー細胞(NK細胞)による がん免疫細胞療法の臨床研究が開始される。特殊技術で培養したNK細胞を末期の消化器がん(胃がん, 大腸がん, 食道がん) の患者に投与して、がん治療効果と安全性が評価される。

ウイルス感染や細胞のがん化から生体を防御する働きがNK細胞にはある。特殊な培養法で培養したT細胞を利用することで、約90%と高純度のNK細胞を大量に培養する技術が開発され、純度の高い免疫細胞によるがん免疫細胞療法が可能になった。既にマウスを用いた動物実験では、がん縮小と転移抑制に高い効果があることが確認されている。

臨床試験は、2014年3月31日まで約2年間実施の予定。試験の実施は、タカラバイオと京都府立医科大学が共同であたる。

培養免疫細胞を用いたがん免疫細胞療法の効果が検証されれば、次には、NK細胞だけでなく、ナイーブT細胞、抗体医薬との併用でさらに効果的な治療法が検討されている。

糖尿病治療薬が がん治療に有効

糖尿病治療薬、がんに有用の可能性

糖尿病の治療薬「メトホルミン」(商品名「メトグルコ」など)が、多くのがん患者に対して有用性を示す研究成果が発表された。糖尿病とがんに密接な関連があることは既知であり、メトホルミンを使うことで糖尿病患者のがん発症が抑制されるという研究結果は、主に大腸がんを中心に報告されてきた。今回の発表では、膵臓がん、前立腺がん、肝臓がん、口腔(こうくう)がん、メラノーマ(悪性黒色腫)と、種類の異なるがんに対しての有効性が検証され、結果が得られた とされている。

膵臓がんに対しては、メトホルミン使用により32%の死亡リスク低下が得られた。前立腺がん患者への安全性を確認が確認された。また、肝臓がんへの投与では、保護的作用の可能性が示唆された。さらに、口腔がんへの進展は最大で90%も抑制されたのだ。

メトホルミンと抗がん薬の併用療法が、治療後の経過があまり良くないメラノーマに対する新たな選択肢となる可能性は高まっている。

研究論文は、3月末の米国がん研究協会(AACR)へ発表された。

転移した微小がん の新治療法

進行した胃がん治療では、胃がん患部を手術で切除しても転移・再発することが多く、術後5年間の生存率は約30%と低いことが問題だった。がん再発の原因の6割以上は、腹膜へのがん転移とされていた。転移したがん病巣が非常に微小なために、手術時に肉眼で見つけ、切除することが困難だったからだ。

しかし、胃がんから転移した肉眼では見えないほどの小さな転移がんを、容易に発見する手法が開発された。蛍光物質で微細な転移がんを光らせて発見が容易になったのだ。この腹腔鏡で早期に見つけ治療する新治療法開発は、大阪府立成人病センターが開発に成功した。

新胃がん治療法では、蛍光物質を投与することで微小な転移がんを赤く光らせる。小さながんでも転移を早く発見できため効果的に抗がん剤治療が可能なのだ。

胃がんだけでなく、転移癌に悩む多くの患者を救える新しい治療法となる期待は大きい。

2012年4月9日月曜日

遺伝する乳がん、卵巣がんのリスクとは

乳がん、早期発見で治療に選択肢

 検査で予見する遺伝性乳がん、卵巣がんに予防切除の選択肢も

遺伝子で予見されるがんがある。遺伝の影響を強く受ける乳がん、卵巣がんだ。「遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(HBOC)」と呼ばれ、特定の遺伝子を検査することで、がんの発病リスクの高低が測られる。

乳がんと卵巣がんの遺伝性HBOCは、BRCA1、BRCA2という二つの遺伝子の変異で測られる。海外での研究報告では、BRCA1に変異があると約40%の人で、BRCA2の変異では約10%には、 70歳までに卵巣がんを発症するリスクが高いと報告されている。乳がんリスクに関しては、BRCA1で約65%、BRCA2で45%だ。女性だけでなく、男性のHBOCに関しても、 男性乳がんや膵臓がんのリスクが高まると報告されている。

日本では女性の20数人に1人が乳がんを発症するが、その5~10%程度が遺伝で乳がん、卵巣がんを発症していると言われている。 200人におおよそ1人の確率は、かなり高いリスクだ。

しかし、近年は事前に遺伝子の検査を受けることで、 HBOCの遺伝子に変異が無いか調べる検査を受けることができる。この遺伝子検査は保険対象外のために、20数万円の自己負担が必要。

もしこの検査で遺伝子の変異が発見された場合には、 3カ月~半年おきに検診を受けることで、がんのリスクをコントロールすることになる。がんリスクが高いことを自覚して、早期発見早期治療に努めるのだ。
乳がんリスクに関しては、早期発見が比較的容易なために治療の選択肢が多い。

ところが、卵巣がんは自覚症状が少ないために、発見後の治療が難しい例が多い。そこで、健康な卵巣を手術で切除することも、選択肢の一つとされている。国内でも、一部の病院でこの予防的な卵巣摘出手術を行っている。ただし、この手術に保険は適用されないので、自費で80万~100万円を負担せねばならない。

HBOCの遺伝子検査は、2011年末までの8年弱で、国内では約500件の検査が行われた。 HBOCの可能性があると分かれば、専門医がいる病院では、医師や認定遺伝カウンセラーが、遺伝カウンセリングの外来で治療の選択肢だけでなく諸々に患者の相談に応じてくれる。

遺伝子を調べた結果が「BRCA1遺伝子に変異あり」とされたことで、乳房の全摘を決断した女性もいる。姉妹を卵巣がんで亡くしていたために、さらに卵巣の切除も希望したが、主治医から諭された。その後は、3カ月に1度、超音波と血液で卵巣がん検診を継続している。

遺伝子検査でがんリスクを測る技術が進歩したことで、がん患者個々のがんリスク管理とメンタルケアの重要性が増してきている。遺伝子検査とがん治療は、カウンセリング態勢が整った病院で受けるのが賢明な理由でもある。

2012年4月6日金曜日

がん激痛は特定タンパク質が原因と解明

がん患者の神経損傷による激痛の原因特定

がんや糖尿病による慢性的で激しい痛みは「神経障害性疼痛(とうつう)」と呼ばれ、発症の仕組みが判らず、治療法も無かった。しかし、ついに神経障害性疼痛の原因が解明された。この神経が損傷して起きる慢性的な激しい痛みの原因は、特定のたんぱく質が原因だったのだ。発見したのは、九州大の井上和秀教授と津田誠准教授らの研究グループ。

研究では、神経が損傷して慢性的な激しい痛みを起こすモデルマウスの脊髄を詳細に観察した。そして、「インターフェロン調節因子8(IRF8)」というたんぱく質が、免疫を担う細胞「ミクログリア」の中でだけで急激に増えることを発見したのだ。つまりIRF8の大量に発生がミクログリアの活動を活性化してしまうことで、神経細胞を異常に興奮させる様々な生体分子を放出され、患者に痛みを生んでいることが判った。
がん患者が悩まされてきた「神経障害性疼痛」は服が肌に触れただけでも痛みが発生する程の痛みだが、タンパク質IRF8を生成できない改造マウスでは、痛みの度合いが50~60%も抑えられたのだ。

神経障害性疼痛の患者は、がんや糖尿病で世界で2千万人以上も存在するが、。これまで有効な治療法が無かった。今後は、がんや糖尿病に対しても、特定されたたんぱく質IRF8の働きを抑える新薬が開発されることで、がん患者の痛みが大幅に緩和される可能性が高まった。

研究成果は5日付の米科学誌「セル・リポーツ」電子版に発表。

2012年4月5日木曜日

ノーベル賞と免疫システムと がんワクチン

がん患者の悩みには、手術や抗がん剤治療などを受けても「他の治療法がない」「副作用がつらい」など、治療の悩みを抱えている患者が多い。最新のがん治療法として、自己免疫力を高めることでがん細胞を攻撃する「がんワクチン」治療を受ける患者が増えている。 2011年ノーベル医学・生理学賞を授与された「樹状細胞の発見とその働き」をがん治療に利用しているのだ、

この「樹状細胞」は、がん細胞に目印を教えることで、がん細胞を攻撃する役割のリンパ球が正確にがんを攻撃するように指令を出す。がん攻撃免疫システムの司令官役と言えるだろう。

「樹状細胞」を用いた新しいがん治療法は、テレビや新聞などのマスコミでも注目を浴びつつあり、その「樹状細胞」を利用したがん治療には高い関心が寄せられている。

樹状細胞を用いたがんワクチン治療は、正式には「樹状細胞ワクチン療法」と呼ばれる。治療対象となるがんは、大腸がんや胃がん、肺がんなど、幅広い部位のがんを治療できる。免疫細胞は、がん細胞だけを攻撃するため、正常な細胞はほとんど傷つけない。つまりは、副作用が少ないのが最大の特徴なのだ。

2012年4月4日水曜日

肺がん新薬は特効薬か!?

肺がん新薬の製造販売が国内で承認された。

新薬は、2007年に発見された肺がんの原因遺伝子「EML4-ALK」を攻撃する、いわゆる分子標的薬だ。新しく承認されたのは、新治療薬「ザーコリ」(一般名クリゾチニブでファイザーから販売)。この新薬は、消化器がんの治療薬として開発されていたが、肺がんの原因遺伝子「EML4-ALK」に作用することが判明したために、抗がん対象を肺がん へ変更して、治験に成功した。厚生労働省が2012年3月30日に新薬として承認。

肺がん新薬 ザーコリ(一般名クリゾチニブ)は、 「EML4-ALK」を持つ患者の約90%に顕著な効果があったとされる。まさに、肺がん特効薬と言える著効をもたらすこの肺がん新薬は、原因遺伝子EML4-ALKを持つ患者に対しては、今後10年で全世界で50~60万人の命を救うと予測されている。 ただし、分子標的薬の常として薬の攻撃対象となる原因遺伝子を持ったがん患者には高い効果があるが、 原因遺伝子の無いがん患者には副作用のみで効果は皆無なのだ。その点は、新薬による治療前に遺伝子検査を実施することで、適用の有無を事前確認し、無用の治療と副作用を回避することができる。

多くのがんに特定の原因遺伝子が続々と発見されている。数年後にはその原因遺伝子を叩く分子標的薬=がん特効薬が開発される期待は大きいのだ。