2013年6月25日火曜日

既存抗がん剤ですい臓がんの進行が全て止まった新治療法

難治癌である膵臓(すいぞう)がんの治療に効果の高い新治療法が開発された。マウス実験では、全てのマウスのすい臓がん進行が停止でき、転移が抑制されたという。

抗がん剤は血管の隙間から漏れ出してしまい、ターゲットのがん患部まで十分な薬量が届かないことが問題だった。さらに、がん患部以外で漏れ出た抗がん剤が、正常な細胞を傷付けることで副作用が出るのだった。

すい臓がんの新しい治療法は、ドラッグ・デリバリー・システム(DDS:Drug Delivery System)という手法を利用した。 がん治療の標的となるがん細胞だけに抗がん剤を届けるためのDDSは、複数の抗がん剤分子をまとめて球体を形成させた。球体となった抗がん剤は、途中の血管からは漏れないが、がん細胞の血管の壁は隙間が広いため、壁を通り抜けて標的のがん細胞に辿り着き、攻撃できるのだ。

新治療法の検証のために膵臓がんを自然発生させたマウス30匹に対して、有効性が検証された。
A) DDSによる治療グループ
B) 通常の抗がん剤治療グループ
C) 治療をしないグループ

B,Cのグループは、それぞれ肝臓に8匹ずつ、消化管に7匹ずつがん転移が発生し、 56日間で半数が死亡した。しかし、AのDDS治療を施したグループでは、全てのマウスの膵臓がんの進行が止まり、全てが70日間生存した。転移は56日目時点で2匹のみ肝臓に転移しただけだった。

がん細胞に直接抗がん剤を届ける新治療の効果は高く、 がんの進行や転移を抑制し、生存率が高められる期待が高まっている。

東京大学が発表した研究成果は、24日付の米科学アカデミー紀要電子版に掲載。

2013年6月24日月曜日

早期大腸がん を検出する がんマーカーを新開発

大腸がんは男性で3位、女性では1位の死亡原因となっている。 大腸がんの発症例が増えているのに加え、 大腸がんが早期発見の難しいがんだからだ。

健康診断で簡単に受けられる大腸がん検診の腫瘍マーカー検査は、正しく発見できる確率は約3割と非常に低いという問題があった。 CTや内視鏡を使えば正確な診断が可能なのは当然だが、簡単な検査ではなく健康診断で気軽に受けられる検査ではない。

このような大腸がんの早期発見対策として、 新しいバイオマーカーが開発され、検査精度は約8割にまで向上したのだ。

新しいバイオマーカーによる検査は、血液が「数滴」で行える。 がん検査にかかる時間も短く、コストも安い。それでも、大腸がんの有無を8割以上という高い確率で検出することに成功している。さらに従来の腫瘍マーカーでは診断が難しかったステージ0や1の早期の大腸がんでも、高い精度で診断できるという結果は特筆されるべきだろう。

開発した神戸大学では、製薬メーカーと共同で、医療現場で手軽に利用できる大腸がん検査キットも開発中で、近い将来に血液型検査キットのような簡便な器具で、大腸がんが高い精度で診断されるようになるだろう。

がんマーカーが着目した血液中の代謝物を変えることで、 腎臓がん肺がん、など他のがんの検診も簡単で高精度化できる可能性が高まっている。さらに糖尿病などへの適用拡大も期待が大きい。

数滴の血液だけで簡単に精度よくがんが検出できるこの新しい診断方法が普及すれば、早期発見早期治療でより多くの人の命が救われるだろう。

2013年6月20日木曜日

抗がん剤の効果が向上する鉄分除去新治療法

がん細胞の性質として、鉄分が減るとがん増殖の速度が抑制されることが解った。 がん細胞にとっては鉄分不足は窮状であり、これを打開するべく血管を新たに引き込もうとする性質があることが解明されたのだ。

このがん細胞の性質を利用、つまりは鉄分をコントロールする=「除鉄」することで、 がん細胞を追い込まれた状態に誘導し、同時に血管新生阻害薬でがん細胞を駆逐治療するのが新治療法の概要だ。

抗がん剤は次々に新薬が開発されるが、がんを根治させる確率は実は極めて低いのが実情。新治療法はがん細胞の防御機構を逆手に利用することで、抗がん剤が効力を発揮できなかった種類の「がん」に対しても高い治療効果が期待できる。具体的には、現行で存在する血管新生阻害作用を有する抗がん剤に除鉄機能を付加することで抗がん効果が高まる可能性がある。

「除鉄」には鉄キレート療法が有効で、1日1回経口で服用するだけの簡便な治療法が承認されている。つまりは、今ある抗がん剤でも十分に応用が可能な新がん治療法の成果に期待が高まっている。

「除鉄」でのがん治療研究は岡山大学が国際バイオ展「BIO tech 2013」へ発表した。

2013年6月19日水曜日

食道がん.子宮頸がん,皮膚がんに有効ながん治療シートとは

がん患部へ特殊なシートを貼り付ける新治療法の効果が確認された。

新しいがん治療シートは、新開発の特殊なシートをがん細胞に貼り付けることで、手術後の任意の時期に体外から磁場をかけ、シートの発熱とシートから出る抗がん剤でのダブルの治療効果が得られる。

がん細胞は熱に弱いため、がん患部を45度程度に温める「温熱療法」が効果があることは広く知られている。

新開発のがん治療シートは、磁気を帯びた粒子が練りこまれ、さらに抗がん剤が混ぜられている。がん治療シートは体外からでも磁場が掛けられると、45度程度に発熱し、さらに熱に反応したシートから抗がん剤が放出される仕組み。

実験では、皮膚がんの培養細胞にシートを適用したところ、1日5分間の磁場による発熱で、2日後にはがん細胞が19%まで減少した。 抗がん剤だけだと26%、発熱だけだと69%にしか減少しないことに比べると、有意にがん治療シートの治療効果が確認されたのだ。

がん治療シートを新開発したのは、物質・材料研究機構(茨城県つくば市)。

新シートの治療対象は、皮膚がんだけでなく、食道がんや子宮頸がん でがん細胞が表面を覆う症例=扁平上皮がんへも効果的な治療対象と期待が高まっている。

2013年6月18日火曜日

脳腫瘍に有効な抗がん剤新薬を承認

悪性脳腫瘍の治療に用いる抗がん剤「アバスチン」が、新薬として厚生労働省に承認された。

抗がん剤新薬アバスチンは原発性脳腫瘍の中で最も発現頻度が高く悪性度の高い「膠芽腫」を発病したがん患者の治療に有効とされる新薬だ。

アバスチンはスイスの製薬会社ロシュが開発製造している抗がん剤。既に脳腫瘍の治療薬として世界各国で承認されていた。

2013年5月21日火曜日

ホルモン療法効かない場合の新がん治療法

がん細胞の中でのみ増殖するウイルスでがんを治療する新治療法の臨床試験が開始される。

人間の細胞に感染するヘルペスウイルスを遺伝子操作することで、がん細胞の中だけで増殖する治療用の「がんウイルス」が開発され、このがんウイルスでがん細胞を駆除する新しいがん治療法だ。

今月5月末から、がんウィルスが開発された東京大学附属病院で、前立腺がん治療に対するがんウイルスを使った臨床試験が開始される。ホルモン療法が効かなくなった前立腺がんのがん患者に対して、がんウイルスを前立腺に注射する。

新治療法では、2~4回の注射が計画されており、その後の6か月間にがんの縮小と副作用を検証し、がんウイルス治療の治療効果と安全性を評価する。

がんウィルスを用いた新治療は、4年前から悪性脳腫瘍のがん患者に実施されており、大きな副作用も発生せず、成果が上がっているという。

がんウイルス治療は、今後 さらに多くのがん治療に応用され、がんを根治する新治療法として確立されることが期待されている。

2013年5月15日水曜日

乳がん,肺がん,大腸がん,胃がんの克服治療費

肺がん、乳がんの高額治療を安くする方法

がん治療は、日進月歩で良くなる一方で医療費は高額になっている。治療費があまりに高いために、病院での治療を断念するがん患者が少なくないことも社会問題化しつつある。癌治療は実際に金額は高いのだが、患者が実質的に払う治療費は、事前情報よりもずっと少ない金額で済むことは体験するまで知らない人の方が多いだろう。実は、保険を始めとする各種制度の活用でなるべく医療費の実質負担額は、かなり低減できるのだ。「先立つモノ」として治療費の金銭を想像しがちだが、がん治療は情報が最優先されるべきだろう。正確かつ的確な情報さえあれば、高額の治療費を恐れて治療を抑制するような勘違いも回避できる。

以下に日本人でのがん発症数の多い「胃がん」「肺がん」「大腸がん」「乳がん」「肝臓がん」の一般的な治療を前提条件とした自己負担の治療費を記した。

なお、検証の前提となる保険は自己負担3割で、かつ「高額療養費制度」を利用している。

【乳がんの治療費】

最も自己負担の治療費が高くなるのは乳がん。乳がん診断後の5年後生存率が87.7 %と高いことが最大の理由だ。

乳がん利用に要する平均入院日数は11.8日。しかし、再発予防治療のホルモン療法が5~10年間も継続される必要があるため、長期間の治療が治療費を累積し多くしてしまう。

近年の乳がん手術の傾向は、切除範囲を可能な限り小さくする“温存手術”が主流。入院は手術時だけで、後の治療はすべて外来で行う。

しかし、切除範囲が大きい場合には、乳房の再建手術が非常に進歩している。人工乳房の再建に要する治療費は、100%自己負担ながら50万~100万円が必要となる。

乳がんは手術後に、再発予防のために放射線照射、抗がん剤治療を実施し、抗がん剤治療終了後からホルモン療法を5年間継続し検査を並行する。

乳がんに対して、早期発見で温存手術・術後再発予防抗がん剤・放射線療法を行った場合、 5年間の治療費合計は92万円となる。

【肺がんの治療費】

肺がんの治療費は、小細胞肺がんに対して、放射線化学療法を実施した場合で2年間に計45万円の自己負担が掛かる。

肺がんは平均入院日数21.7日で、進行が早いのが特徴であるために、肺がんと診断された後の5年後生存率は29%と低い。

肺がんは、発見時には既に手術が不可能なほどにがんが進行している患者が多く、放射線治療や抗がん剤治療が中心となるのだ。

肺がんへの標準的な治療法は、最初の20日間の入院期間中に放射線治療と抗がん剤治療を実施し、その後の3か月間で追加の抗がん剤治療と転移しやすい脳への予防的な放射線照射を行う。 2年目以降も検査は必須となる。

【胃がんの治療費】

胃がん診断後の5年後生存率は64.3%と高い。胃がんの平均入院日数は22.6日。早期の胃がんで発見されたなら、5年後生存率は90%を超えるている。

早期で発見の胃がんに対しては、がん患者の負担が重い開腹手術ではなく、負担の少ない内視鏡でがん粘膜を切り取るだけの手術が拡がり、日帰り手術さえも可能となっている。

胃がん内視鏡手術の負担が軽いのは、 4か所程度の小さな穴をお腹に開けて細い腹腔鏡を差し入れ、先端のメスでがん患部を切り取る開腹が早いのだ。手術費用は120万円と高額だが、高額療養費制度の適用で患者の実質負担額は9万円程度。

入院は10日程度、術後の検査費用(毎年3万円)を含めて、2年間での治療費の自己負担額は約14万円となる。

【肝臓がんの治療費】

肝臓がん治療費は、経皮的エタノール注入療法を前提とすると2年間で合計21万円。 3年目以降も6万円の検査費用が毎年に自己負担となる。

【大腸がんの治療費】

大腸がん、結腸がんの治療費は、切除手術・術後再発予防抗がん剤療法を行った前提なら、2年間で自己負担は42万円。

がんの治療費が高額化する一方で、患者の自己負担額が抑えられているのは、「高額療養費制度」のお陰だ。「高額療養費制度」は、治療費が数十万円から数百万円と高額になった場合でも、患者の自己負担額が月額一定に抑制される健康保険の制度。患者の自己負担額は収入と年齢で差があるが、月額2~8万円に軽減される。

高額療養費給付の問題は、患者が治療費の3割を一度支払い、後に還付されるため"立替金"が必要なことだ。実質が安くなると解かっていても、高額の一時払い金が治療への障壁となる場合も多い。

しかし、救済策として、支払額を最初から減額する「委任払制度」や「貸付制度」も増えてきた。「委任払制度」には病院承認が必要な場合や、貸付金額が保険機関で違う場合もあるので、がん治療に際しては、早期に病院の医療相談室等に相談することが必須だと言える。

がんは、治る病気だ。その前提で、万全の治療を施しつつ、治療費の負担を抑制し、予後の人生を益々汁実させるための備えを進める算段で臨みたい。