2012年4月9日月曜日

遺伝する乳がん、卵巣がんのリスクとは

乳がん、早期発見で治療に選択肢

 検査で予見する遺伝性乳がん、卵巣がんに予防切除の選択肢も

遺伝子で予見されるがんがある。遺伝の影響を強く受ける乳がん、卵巣がんだ。「遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(HBOC)」と呼ばれ、特定の遺伝子を検査することで、がんの発病リスクの高低が測られる。

乳がんと卵巣がんの遺伝性HBOCは、BRCA1、BRCA2という二つの遺伝子の変異で測られる。海外での研究報告では、BRCA1に変異があると約40%の人で、BRCA2の変異では約10%には、 70歳までに卵巣がんを発症するリスクが高いと報告されている。乳がんリスクに関しては、BRCA1で約65%、BRCA2で45%だ。女性だけでなく、男性のHBOCに関しても、 男性乳がんや膵臓がんのリスクが高まると報告されている。

日本では女性の20数人に1人が乳がんを発症するが、その5~10%程度が遺伝で乳がん、卵巣がんを発症していると言われている。 200人におおよそ1人の確率は、かなり高いリスクだ。

しかし、近年は事前に遺伝子の検査を受けることで、 HBOCの遺伝子に変異が無いか調べる検査を受けることができる。この遺伝子検査は保険対象外のために、20数万円の自己負担が必要。

もしこの検査で遺伝子の変異が発見された場合には、 3カ月~半年おきに検診を受けることで、がんのリスクをコントロールすることになる。がんリスクが高いことを自覚して、早期発見早期治療に努めるのだ。
乳がんリスクに関しては、早期発見が比較的容易なために治療の選択肢が多い。

ところが、卵巣がんは自覚症状が少ないために、発見後の治療が難しい例が多い。そこで、健康な卵巣を手術で切除することも、選択肢の一つとされている。国内でも、一部の病院でこの予防的な卵巣摘出手術を行っている。ただし、この手術に保険は適用されないので、自費で80万~100万円を負担せねばならない。

HBOCの遺伝子検査は、2011年末までの8年弱で、国内では約500件の検査が行われた。 HBOCの可能性があると分かれば、専門医がいる病院では、医師や認定遺伝カウンセラーが、遺伝カウンセリングの外来で治療の選択肢だけでなく諸々に患者の相談に応じてくれる。

遺伝子を調べた結果が「BRCA1遺伝子に変異あり」とされたことで、乳房の全摘を決断した女性もいる。姉妹を卵巣がんで亡くしていたために、さらに卵巣の切除も希望したが、主治医から諭された。その後は、3カ月に1度、超音波と血液で卵巣がん検診を継続している。

遺伝子検査でがんリスクを測る技術が進歩したことで、がん患者個々のがんリスク管理とメンタルケアの重要性が増してきている。遺伝子検査とがん治療は、カウンセリング態勢が整った病院で受けるのが賢明な理由でもある。

2012年4月6日金曜日

がん激痛は特定タンパク質が原因と解明

がん患者の神経損傷による激痛の原因特定

がんや糖尿病による慢性的で激しい痛みは「神経障害性疼痛(とうつう)」と呼ばれ、発症の仕組みが判らず、治療法も無かった。しかし、ついに神経障害性疼痛の原因が解明された。この神経が損傷して起きる慢性的な激しい痛みの原因は、特定のたんぱく質が原因だったのだ。発見したのは、九州大の井上和秀教授と津田誠准教授らの研究グループ。

研究では、神経が損傷して慢性的な激しい痛みを起こすモデルマウスの脊髄を詳細に観察した。そして、「インターフェロン調節因子8(IRF8)」というたんぱく質が、免疫を担う細胞「ミクログリア」の中でだけで急激に増えることを発見したのだ。つまりIRF8の大量に発生がミクログリアの活動を活性化してしまうことで、神経細胞を異常に興奮させる様々な生体分子を放出され、患者に痛みを生んでいることが判った。
がん患者が悩まされてきた「神経障害性疼痛」は服が肌に触れただけでも痛みが発生する程の痛みだが、タンパク質IRF8を生成できない改造マウスでは、痛みの度合いが50~60%も抑えられたのだ。

神経障害性疼痛の患者は、がんや糖尿病で世界で2千万人以上も存在するが、。これまで有効な治療法が無かった。今後は、がんや糖尿病に対しても、特定されたたんぱく質IRF8の働きを抑える新薬が開発されることで、がん患者の痛みが大幅に緩和される可能性が高まった。

研究成果は5日付の米科学誌「セル・リポーツ」電子版に発表。

2012年4月5日木曜日

ノーベル賞と免疫システムと がんワクチン

がん患者の悩みには、手術や抗がん剤治療などを受けても「他の治療法がない」「副作用がつらい」など、治療の悩みを抱えている患者が多い。最新のがん治療法として、自己免疫力を高めることでがん細胞を攻撃する「がんワクチン」治療を受ける患者が増えている。 2011年ノーベル医学・生理学賞を授与された「樹状細胞の発見とその働き」をがん治療に利用しているのだ、

この「樹状細胞」は、がん細胞に目印を教えることで、がん細胞を攻撃する役割のリンパ球が正確にがんを攻撃するように指令を出す。がん攻撃免疫システムの司令官役と言えるだろう。

「樹状細胞」を用いた新しいがん治療法は、テレビや新聞などのマスコミでも注目を浴びつつあり、その「樹状細胞」を利用したがん治療には高い関心が寄せられている。

樹状細胞を用いたがんワクチン治療は、正式には「樹状細胞ワクチン療法」と呼ばれる。治療対象となるがんは、大腸がんや胃がん、肺がんなど、幅広い部位のがんを治療できる。免疫細胞は、がん細胞だけを攻撃するため、正常な細胞はほとんど傷つけない。つまりは、副作用が少ないのが最大の特徴なのだ。

2012年4月4日水曜日

肺がん新薬は特効薬か!?

肺がん新薬の製造販売が国内で承認された。

新薬は、2007年に発見された肺がんの原因遺伝子「EML4-ALK」を攻撃する、いわゆる分子標的薬だ。新しく承認されたのは、新治療薬「ザーコリ」(一般名クリゾチニブでファイザーから販売)。この新薬は、消化器がんの治療薬として開発されていたが、肺がんの原因遺伝子「EML4-ALK」に作用することが判明したために、抗がん対象を肺がん へ変更して、治験に成功した。厚生労働省が2012年3月30日に新薬として承認。

肺がん新薬 ザーコリ(一般名クリゾチニブ)は、 「EML4-ALK」を持つ患者の約90%に顕著な効果があったとされる。まさに、肺がん特効薬と言える著効をもたらすこの肺がん新薬は、原因遺伝子EML4-ALKを持つ患者に対しては、今後10年で全世界で50~60万人の命を救うと予測されている。 ただし、分子標的薬の常として薬の攻撃対象となる原因遺伝子を持ったがん患者には高い効果があるが、 原因遺伝子の無いがん患者には副作用のみで効果は皆無なのだ。その点は、新薬による治療前に遺伝子検査を実施することで、適用の有無を事前確認し、無用の治療と副作用を回避することができる。

多くのがんに特定の原因遺伝子が続々と発見されている。数年後にはその原因遺伝子を叩く分子標的薬=がん特効薬が開発される期待は大きいのだ。

すい臓がん手術が難しい原因

「膵臓がん」は、国内で年間2万8000人以上の命を奪っている。胃や大腸などの他の臓器と違い、腫瘍の発見が遅れがちで、また悪性度が高いため最も治療が困難ながんなのだ。

一般的に膵臓がん診断後の手術適用は2割程度。その手術も、膵臓が他臓器や太い血管と神経に隣接しているため非常に難易度が高い。一歩間違えば患者は術中に命を落とし、一見うまくいったかに見えた術後にも激しい下痢や栄養不良に悩まされるといったことも起こる。膵がん患者の命とQOL(生活の質)を確保することは非常に困難なのだ。

膵臓がんは、診断された時点で局所に がん が留まっていることが少なく、他臓器へ転移しているゆえに、いわば全身病なのだ。しかも、膵臓がんには有効な抗がん剤が少なく、また他のがんで効果のある分子標的薬も、有望な新薬はまだ登場していない。

さらに、がん患者が高齢で合併症を持つ症例も多いため、さらに難易度は高まってしまう。
大腸がんなどによる転移性肝がんや原発性肝がん、胆管がん、胆嚢がんの手術も積極的に行っている経験ある病院・医師による治療が重要でなのだ。

2012年4月3日火曜日

がん再発を防ぐ新薬開発へ

がん再発防止にがんが生き残る仕組みを解明

従来のがん治療は抗がん剤地路湯や放射線治療によって、がん細胞を死滅させた。しかし、がん幹細胞が生き残れば、がん細胞が再び増殖することが多く、がん患者は常にがん再発に脅かされていた。がん再発の原因は、がんの基で体内でがん細胞を造り続ける「がん細胞」の存在だ。乳がんが治療の10~20年後に再発する原因は、抗がん剤も放射線も効かないがん幹細胞が存続し続けているからなのだ。

今回は、体内のがん幹細胞が生き残るのに必要なタンパク質を自ら分泌していることが発見された。発見された「ヘレギュリン」と呼ばれるたんぱく質が 細胞膜に付くと、がん細胞内の遺伝子に信号が伝わり、NFκ(カッパ)Bという物質が増加し、がん増殖やがん転移に適した環境を整えていた。

抗がん剤や放射線治療でもなかなか死滅しないがん細胞では、この特定のたんぱく質が細胞膜にくっつき、がん増殖やがん転移、がん再発を引き起こしていると断定された。実際に再発率の高い乳がん患者ではヘレギュリン濃度が高い傾向があることは既知だった。

この 特定のタンパク質が がん細胞が体内で増殖能力を維持する仕組みを妨害できれば、革新的な新しい乳がん治療新薬が開発できだけでなく、がんの再発をも高い確率で防止できる可能性が高まった。

東京大医科学研究所の後藤典子准教授(がん生物学)らのチームが乳がん患者から摘出したがん細胞を培養し、発見した。研究論文は、2日付の米科学アカデミー電子版に発表された。

分子標的薬がん治療に不可欠な処置

分子標的薬は、がん細胞を増やしたり、がん組織に血管を引き込んだりする特有の分子(主にタンパク質)の機能を止めることで、がんの成長を抑える新しい概念のがん治療薬の総称。大腸がんの治療に対しても、がん増殖に関わるタンパク質の働きを抑える分子標的薬が、四年前から複数登場。手術が難しいがん再発がんの治療に使われ、生存期間の延長に著しい効果が得られている。特定の分子を狙うため、がん細胞の遺伝子のタイプによって効果の有無が違う。

がん細胞だけ狙って攻撃する新しいがん治療薬「分子標的薬」は、大腸がんや肺がんなどのがん患者への治療効果が極めて高く、新薬も相次いで登場している。
がん治療に用いられる分子標的薬の特徴は、従来の抗がん剤のように正常細胞にも打撃を与えることで脱毛や吐き気などの副作用を起さないこととされていた。がん細胞に特有の分子をピンポイント攻撃することで、がん細胞の成長を止めたり、殺したりするからだ。

しかし、分子標的薬は、まだ発展途上であることから、皮膚細胞など正常な細胞も一部攻撃してしまうことは、知られていない。分子標的薬特有の副作用が出やすい薬も複数あり、慎重な治療対策が課題になりつつある。
副作用の多くは、分子標的薬の標的となるタンパク質が皮膚や爪を作る細胞にも存在するため発生する。皮膚や爪の細胞も同時に薬の攻撃を受けてしまい、皮膚などに炎症が出るのだ。副作用の例としては、腎臓がんや肝臓がんの分子標的薬ネクサバールは、手足の皮膚が腫れて痛む「手足症候群」が出やすく、慢性骨髄性白血病の分子標的薬グリベックは、かゆみを伴う赤い発疹が出やすい。

分子標的薬の副作用で最も多いのは、顔などに出るにきびのような発疹。新しい皮膚がうまく作れないため皮膚が薄くなって乾燥することで、かゆみがひどくなったり、指先が割れて痛む。酷い場合には、手足の爪の周りが腫れ、靴を履くことや手仕事が難しくなる場合さえある。副作用の増悪は抗がん剤治療の継続可否にも影響を及ぼす。
しかし、皮膚障害の治療法はほぼ確立されているので、早めに正しい処置で対処することで治療継続は可能だ。にきびのような発疹には炎症を抑える効果のミノサイクリンなどの内服抗生剤やステロイドの塗り薬が有効。適切な薬や保湿剤を使ったスキンケアに努め、日焼け止めや、炎症を抑えるステロイド薬を塗ることで、皮膚障害の重症化を防ぐことができる。また、爪の周囲に炎症が起きた場合には、皮膚科医によるテーピングが痛みを和げる。
足が腫れて痛みのある場合には、履物選びでも症状が改善し、がん患者の生活の質が大幅に上がることもある。

症状が出てから対応するのではなく、分子標的薬の治療を開始する前日から内服抗生剤を飲むことが重要なのだ。

「分子標的薬は、皮膚障害が強いほど生存期間が長い」との研究報告も複数ある。がん治癒に対する抗がん剤の効果を最大化するためにも、副作用を抑えることは軽視できないのだ。